地元の足から「アトラクション」に、DMVで大変身 阿佐海岸鉄道が導入「世界初」車両の乗り心地は

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幸いなことに、沿線は太平洋を望む風光明媚な場所が多く、バス区間のいっぽうの終点、道の駅宍喰温泉には大型のホテルもある。鉄道だけでなく、道路に降りてからの区間があるため、駅へ行くだけではわからなかった見どころまでアクセスできるようになったことは大きなメリットである。

筆者が乗車したときも、鉄道ファンとともに観光客が多かったので、世界初の乗り物であるとともに、沿線の見どころも知ってもらう必要があるだろう。

旧国鉄、もしくは国鉄の計画していた路線を引き継いで、地方が運営する第三セクター鉄道となった路線は数多いが、いずれも地域の足を確保するために運行している。ところが阿佐海岸鉄道は、観光鉄道という違った道を歩みだしたわけで、地域が出資しているのに地域のための運行ではないというのも日本初ではないだろうか。地域が観光鉄道を運行し、訪れる観光客が増えれば地域のためということもできるが、運営目的が珍しい形態であることは間違いなく、今後の行方が注目されるところである。

おりしも日本各地のローカル線で、地域需要の減少から鉄道の存続が危ぶまれる事態に陥っている。そんななか、阿佐海岸鉄道は大胆に地域需要をきっぱり切り離し、ユニークな運営に活路を見出した鉄道といえる。存続方法の手段は別として、存続のためにあらゆる手を尽くすという意味で、一石を投じた気がする。

車両は何年使えるのか

課題としては、1車両の定員が18人なので、満席だったとしても1便あたりの収入は少ない。また、団体客の受け入れもなかなか難しいであろう。

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特殊な使いかたなので、車両の寿命も未知数に思える。鉄道車両に対して車両価格やメンテナンス経費は抑えられるだろうが、運行するたびに道路から線路、線路から道路とモードチェンジしているので、その複雑な可動部分が故障原因になることはないのだろうか。量産されていない車両なので、部品補充や車両補充なども容易とはいかないのではないだろうか。と、心配な部分もないわけではない。

しかし、世界初のDMVとして出発した以上、ユニークな生き残り方法も可能というお手本になってほしいものである。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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