粉飾倒産がコロナ禍を脱する今から増えてくる訳 倒産件数も休廃業も政策的に抑え込まれた反動で
一方で、会社やブランドが残るケースもあります。昨年、話題になったのは、小中学生の女の子たちに人気のキャラクター「ほっぺちゃん」を擁するサン宝石(山梨県中央市)の倒産です。民事再生法の適用を申請した後、クラウドファンディングで資金を集めるという異例の手法で話題を集めました。その後、玉光堂グループの聖和趣味の会(大阪市)の出資を受けて存続し、ほっぺちゃんも、今なお健在です。
ところで、倒産する企業というのは、年に何社くらいあるでしょうか?
倒産件数は歴史的低水準にあるけれど
2021年の倒産件数は、6000件強で、歴史的な低水準でした。2008年のリーマン・ショック後に倒産が急増したのをきっかけに、政府は金融機関に、企業融資のリスケジュール(返済猶予)に柔軟に応じることを求めるようになりました。その結果 2010年代は、倒産件数は減少していきました。そして2020年に始まった新型コロナウイルス禍。多くの企業が打撃を受けましたが、倒産は増えるどころか、さらに減りました。持続化給付金など、政府による支援策の効果です。
ただし、倒産が減る一方で、休廃業は増えていました。後継者難などを背景に、事業を畳む経営者が多くいたからです。しかし、コロナ禍2年目の2021年は、休廃業も減少に転じました。コロナ対応の支援が、事業継続を諦める経営者の気持ちを押しとどめています。
つまり、倒産件数も休廃業も政策的に抑え込まれています。ということは、倒産に至らなくても、実質的に経営が破綻している企業が増えていると考えられます。いわゆる「ゾンビ企業」です。しかもコロナ禍の収束はなかなか見えず、資源高や円安など、経営の先行きを不透明にする要因は数多くあります。
「コロナ禍の1年目、2年目は、業績が悪くても、今は特殊事情があるからと許された。しかし、これから経済をできるだけ正常に回す方向に社会が動いていく中で、そろそろ言い訳が利かなくなってくる。そうなったとき、自社の決算書を実態よりよく見せたいと思うであろう経営者は今、かつてなく多くいるはずだ」
東京商工リサーチの友田信男常務は、こう指摘します。
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