稼ぎ頭に"大寒波"、新日鉄住金はどう動く? 大型案件失注に加えて油井管で減損計上
そこに追い打ちをかけそうなのが、昨年後半から進行している原油安だ。特に影響が大きいのは、油田や天然ガス田を掘削するのに使われるシームレスパイプ。旧住友金属系の和歌山製鉄所などで製造しており、年間の生産量は約120万トン。主に中東や欧州、東南アジアなどで使われている。
新日鉄住金の年間5000万トン近い粗鋼生産量からすれば、油井管用シームレスパイプの生産量は微々たるもの。しかし、このうち2割程度は海底油田掘削など、過酷な環境で使用される高強度・高耐食性のハイエンド品だ。技術的に生産が難しいだけに、販売単価は一般の油井管より格段に高く、利益への貢献度も大きい。
中級鋼管が価格競争に直面
そんな稼ぎ頭に誤算が生じている。2007年に旧住金が欧州のバローレック社と合弁で立ち上げたブラジルの鋼管会社VSBは、2011年に操業を開始したものの、現状の稼働率が6~7割と低迷しているのだ。
当初、和歌山製鉄所は超ハイエンド品に集中し、中級品をVSBで生産する計画だった。ところが「シームレスパイプという難しい製品を、いきなりブラジルでやろうとしたことは失敗だった」(新日鉄住金幹部)。
なかなか稼働率が上がらないことに加えて、急速に勢力を伸ばした中国の新興鉄鋼メーカーが続々とシームレスパイプの生産設備を導入。VSBの狙っていた中級の鋼管はたちまち価格競争に追い込まれた。
新日鉄住金は2014年度第3四半期決算で、VSBに出資する800億円程度のうち、9割近くの686億円を減損として計上。通期の純利益は1800億円と、前期比25.8%減に下方修正した(従来予想は同3.0%増の2500億円)。
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