--外資系企業の社長職を3社務められ、2003年に米国グーグル副社長兼日本法人社長として就任、名誉会長を経て今年退任されました。8年もの間在籍されたグーグルとの出会いについてお聞かせください。
きっかけはヘッドハンティングです。ヘッドハンターの方たちは外資系日本法人トップの候補リストをつねに持っています。
IT業界であればコンピュータとマネジメントができ、英語が話せるという人が候補に挙がります。コンピュータとマネジメントができる人は10万人規模でいましたが、なおかつ英語もできる人となると当時は200人くらいに絞られました。
さらにその中から私が選ばれたのは、前に勤めていた日本ディジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)で「人工知能」の研究に携わっていたからです。グーグルのコアテクノロジーは人工知能なんですよ。年齢からして次が最後の仕事だろうと思っていた矢先、グーグルから「実は人工知能が実用の段階に入ってきていまして……」とお声がけいただいたわけです。人工知能は私の夢でありライフワークですので、グーグルからのお誘いはとても魅力的でした。
ところが、当時すでに私はインターネットの詳細や最先端のコンピュータサイエンスがよくわからなくなっていました。本社CEOのエリック・シュミットと面接した際、そのことを率直に伝えました。すると彼はこう言ったんです。
「大丈夫。仕事は若い人に任せておけばいい。われわれ世代がコンピュータ産業の中で犯してきたミステイクをしないよう、彼らをウォッチしてくれればいい。特殊分野である人工知能を理解している君は、彼らと会話が成立する。わからないこともわかっているフリができるはず」。
そういった期待もされているなら私にもできるかなと思い、お引き受けしました。
--コンピュータ産業の中で起こったミステイクとは何でしょうか。
コンピューティングスタイルがつねに変遷し、リーディングカンパニーも変わっていくのがコンピュータ産業です。私が勤めた会社は、全部なくなっていますからね。