【産業天気図・家電/AV】デジタル家電の市場拡大でも、価格競争激化で「利益なき成長」の恐れも

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2004年の年末は、液晶・プラズマパネルを用いた大インチの薄型テレビやDVDレコーダー(録画再生機)など商戦で盛り上がった。こうしたデジタル家電の購入者は従来のマニア層から一般家庭に広がり、まさに爆発的な勢いで需要が拡大し始めている。ただし、急成長する市場を見て各社が続々と参入、シェア争いは熾烈化する一方だ。
 その代表例がDVDレコーダー。昨年前半は松下電器産業や東芝、パイオニアなど3社で市場を独占していたが、今や参入企業は日本メーカーだけでも10社を軽く突破。メーカー間で機能の大きな差もなくなり、“安売り合戦”が過熱。市場が需要爆発期に入ったにもかかわらず、セットメーカーが儲からないという皮肉な現象が起きている。
 そうした家電業界にあって、業績が失速するメーカーも増えている。パイオニアは中間決算発表時に年間の業績予想を大幅に引き下げた。収益牽引役だったPC用の記録型DVDドライブが急激な単価下落に直面、期待のDVDレコーダーもシェア低下や売価ダウンで採算が厳しい。日本ビクターは大黒柱のビデオカメラが世界各地でシェアダウン、下期も単価下落等で苦戦を強いられそうだ。三洋電機はOEM供給先の不振を受け、収益牽引役のデジカメ関連ビジネスに大ブレーキ。
 一方、『晴れ』組はシャープと松下電器産業。シャープは液晶テレビの販売が拡大、携帯電話などのモバイル機器に搭載する中小型液晶も大きく伸びそう。液晶テレビ等の単価下落は避けられないが、自ら液晶パネルを生産しており、コスト競争力は高い。上期に続き、通期でも売上高、利益は過去最高を更新する見通しだ。松下電器産業も安定度は抜群だ。プラズマテレビなどAV製品の販売好調に加え、デバイスや白物家電などの収益も底堅い。携帯電話が海外で大苦戦を強いられてるが、全社的に構造改革による固定費削減が順調で、むしろ業績は増額が濃厚とみられる。
 増益予想でも『晴れ』とは言い難いのがソニー。気掛かりは、収益力低下が著しいエレクトロニクス(エレキ)部門。昨年から大掛かりなリストラを進めているものの、逆にエレキ部門の上期は大幅な減益に終わった。収益の源だった携帯オーディオやビデオカメラ・デジカメの利益率低下が顕著で、こうした高収益分野の地盤沈下によってリストラ効果が完全に消されている。下期はリストラ費用が前年より数百億円規模で減るため、会社側は「下期はエレキの大幅な収益回復が期待できる」と予想しているが、シナリオ実現のハードルは高いと言わざるをえない。
 05年度は『晴れ時々くもり』の空模様が続く中、さらに価格競争が激しくなりそう。パネルの取引価格下落を背景に、春以降は薄型テレビの値下がりが加速するとの見方も出ている。市場がさらに膨らむのは確実だが、セットメーカーにとっては、薄型テレビがDVDレコーダーの二の舞いにならなければ良いのだが…。
【渡辺清治記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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