プレスリリース「広報」が陥りがちな思い込み2選 たくさん書けばOKじゃないし意味ないわけでもない

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私が記者として働いていた日本経済新聞でも、複数の記者が一定の紙面を毎日、あるいは毎週、埋めていました。私自身も若いころ、事業会社担当で日経新聞本紙に出稿するかたわら、日経関連の専門紙の2面を割り当てられ、毎週3人程度で埋めていたことがあります。

取材がうまくいっているときはよいのですが、計画どおりにいかなかったり、紙面づくりの見通しが甘かったりすると、紙面を埋めるだけの行数が足りなくなり、締め切り直前に「ひえー、どうしよう!」と慌てふためくことになります。

ピンチのときに「よいリリース」が「神」に

これは多くの記者が直面するピンチで、締め切りが近づくと、現場の責任者が「あと100行足りないぞ。候補を早く出して!」などと記事を取り立てる声がそこかしこから聞こえてきます。だから、企業の広報担当者が夕方以降に新聞記者に電話をすると、記者が非常に焦っていたり、イライラしたりしていることがあるわけです。

御多分に漏れず、若いころの私も「紙面を白紙で出しかねない」ピンチに陥ることがしょっちゅうありました。我ながら「もう少し計画的にできなかったものか」と情けなく思いますが、20代で記者になりたての私はそれでも必死にやっていたのです。ともかく、当時の私に計画性がなかったとしても、記者としての能力が足りなかったとしても、紙面づくりについては何とかしなければなりません。

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そこで当時の私は、そんなピンチに陥ったとき、机に積み上がったプレスリリースを必死になって熟読し、記事に使える「よいリリース」を選び出そうとしました。

もちろんここでも内容は問われますが、こうしたピンチのタイミングにおいては、企業が発表してくれた「よいプレスリリース」は、記者にとって「神」になります。よいリリースを見つけ出すことができれば、それを見ながら記事化し、何とか紙面を埋めることができました。その企業や広報担当者には本当に感謝したものです。

しかし、記者にとって「悪いプレスリリース」は、そんな状況ですら、やはりゴミ箱に残ったまま、後日、焼却処分される運命にありました。

プレスリリースは「ゴミ」にもなれば「神」にもなる。その作り方さえ学べば、大いに価値のあるものなのです。

日高 広太郎 広報コンサルタント、ジャーナリスト

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ひだか こうたろう / Kotaro Hidaka

1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。その後、小売店など企業担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年に東証一部上場のBtoB企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。クライアント企業のメディア掲載数を急増させている。

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