異例だった「BTSホワイトハウス訪問」の深い意味 政治担当の記者たちでさえ撮影に夢中になった
アメリカで頻発するヘイト犯罪に対し、上下院議員やハリウッドの俳優らがソーシャルメディアを使って哀悼の意を示し、抗議することはつねにある。しかし、アジアの有名人、いわんや日本の有名人が声明を出すのは、あまり聞いたことがない。
アメリカでアジア系市民を標的にしたヘイト犯罪は急増し、深刻な問題だ。
アジア系に対するヘイト犯罪は2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった直後から激増した。トランプ大統領(当時)は、ウイルスを「チャイナ・ウイルス」と呼び、今日に至るまで繰り返し発言している。感染と死亡者の増加による不安や恐怖が市中で高まる中、中国系と見間違えられるアジア系全体に怒りが向けられた。
被害者の7割は女性
アメリカ連邦捜査局(FBI)によると、アジア系に対するヘイト犯罪は20年、前年比73%増の279件となった。しかも、被害者の7割近くが女性に集中している。ニューヨーク市警によると、2021、2022年も引き続き件数が増えている。
コンサルティング業のミシェル・アリサ・ゴさん(40)は今年1月、地下鉄のタイムズ・スクエア駅で、男性に電車の前に突き落とされて即死。3月14日には、アジア系女性(67)がアパートビルの入り口で、男性に125回に上る殴る蹴るの暴行を受けて重傷を負った。警察の発表によると、前科が14回ある加害者男性は被害者に「アジアのメス犬!」と言い、無視されたのちに暴行を始めた。
インスタグラムのアジア系ヘイトに反対するアカウント「Asian Fighting Injustice」には、被害者の写真や犯行現場のビデオがアップされる。暴行を受けて顔があざだらけになったり、顔の一部が変形してしまった女性らの写真は人ごとと思えない。あるいは、地下鉄駅や通りで、いきなり蹴られて崩れ落ちる女性らのビデオを毎週のように見る。
筆者の周りのアジア系女性は、夜の会食をすることはなくなった。地下鉄駅や車内でも常に周囲に目を配り、スマホや本に集中することはできない。ほかの人種の女性でさえ、同伴なしで夜に外出することをやめた人もいる。
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