杉原千畝は、リトアニアのカウナス領事館での任務にあった1940年の7月末からベルリンへの離任の9月5日までの間、ユダヤ系難民に大量の「命のビザ」を発行した外交官として知られている。当時のリトアニアにはポーランドから避難してきたユダヤ系難民が大勢いたが、ソ連によるリトアニア併合が濃厚となり、難民らは国外への脱出を切望していた。
本書は、杉原研究の第一人者が今までの研究蓄積を踏まえ、主に中高生を念頭に置いて執筆したものだ。杉原がどのようにして「われわれの知る杉原」になったのかを詳しく知りたい向きには彼の生誕からの足跡をたどることで応え、さらに「われわれの知らない杉原」の側面も教えてくれる。そういった出色の評伝である。
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