北海道新幹線「並行在来線」理不尽な廃止の裏事情 データを精査せず、強引にバス転換を決定
2020年豪雨で甚大な被害を受けたJR九州の肥薩線(熊本県・鹿児島県)についても被害の大きかった熊本県側の輸送密度が414人にもかかわらず、国土交通省、熊本県、JR九州の3者で鉄道での復旧を前提とした議論が進められており、復旧後の運行経費を国が補助をするスキームの検討にも踏み込んだ。鉄道を採算だけで評価する日本独特の考え方ではなく、地域の社会資本として評価する世界標準の考え方が徐々に広まりつつある。
余市町長の齊藤啓輔氏は、「道と国に対して言うべきことは言ってきたが、町の立場ではできることに限界があった。こうした鉄道の存廃問題は都道府県知事のリーダーシップの取り方次第で状況は大きく左右される。今回の事例は反面教師として今後の政策の糧になるように国の議論の場に上げていかなければならない」と悔しさをにじませる。
余市観光協会会長の笹浪淳史氏も「事前に道とバス会社との協議があったわけではなく、近年のバスドライバー不足の問題からバスで本当に通勤・通学の輸送力と定時性を代替できるかは不透明。鉄道がなくなればワインやウイスキーを核にした余市の観光に悪影響が出る」と憤る。余市観光協会や余市商工会議所では今後も鉄道の存続に向けての議論再開を訴えかけていく。
鉄道のメリットが理解されていない
余市町内で、バス転換推進派の意見も聞いてみたが、「鉄道維持にそんなにお金がかかるなら、お金のかからないバスのほうがよい」といった意見が大勢で、鉄道の巨額な赤字額だけが注目され、コスト面以外のメリット・デメリットがしっかり理解されていない印象だった。
鉄道廃止によって不利益を被るのは地域に暮らす住民と事業を営む商工業者だ。新たな発想で鉄道経営をすれば地域の為になる鉄道が実現できると考えられるだけに、理不尽な意思決定に対しては声を上げ続けるしかない。
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