バイデンの台湾防衛発言を「失言」と見る人の盲点 何度も繰り返している発言を失言と呼べるのか

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今回の台湾防衛発言は、東京訪問中に日本の首相・岸田文雄と行った共同記者会見で飛び出した。台湾有事への対応を問われたバイデンは、最初は従来の政府見解から離れることなく、台湾政策に「変更はない」と述べ、中国に侵略されないよう台湾を支える立場だとした。「日本やその他の国々と毅然として立ち向かい、そうしたことが起こらないようにする」という言葉で、意図的に曖昧さを残したわけだ。

バイデンの側近たちは満足した。これなら何の問題もない。しかし、そこにCBSニュースのナンシー・コーデスによる関連質問が続いた。コーデスは、バイデンがウクライナでの戦争に対しアメリカが直接的に軍事介入することはないとした点に言及。その上で「もし同じ状況になった場合、台湾を守るために軍事的に関与する意思はあるか」と尋ねた。

これに対し、バイデンは「イエス」と答えた。「それがわれわれのコミットメントだ」。

火消しモードに突入した側近たち

その瞬間、記者会見場にいた政権スタッフのアンテナは全開になった。

「武力によって奪える、武力で奪ってしまえばよい、という考えは適切ではない」。台湾についてバイデンはこのように言葉を続けた。「地域全体が混乱し、ウクライナで起きたのと似たようなことになる。負担はそれ以上とさえいえる」。

この段階でバイデンのスタッフは、大統領の発言が彼らの望む一線を越えたことをはっきりと認識し、火消しモードに突入した。「われわれの政策に変更はない」とするお決まりの釈明コメントを慣れた手さばきで並べ、バイデンは「自衛のための軍事的手段を台湾に提供する」というアメリカのコミットメントを「繰り返した」に過ぎないという説明に奔走したのである。

それでもバイデンの発言は、台湾に自衛のための軍事的手段を提供するといった範疇を超えるものであり、アメリカの直接的な軍事介入を示唆するものだと広く受け止められた。

実はバイデンは以前から、中国と台湾について歴代大統領が採用してきた曖昧戦略を無視している。昨年8月には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が攻撃された場合「われわれは対抗措置をとる」と同盟国の疑念を払拭する発言を行い、「日本も、韓国も、台湾も同じだ」と付け加えた。

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