コストコは、なぜ年会費4000円を取るのか 知られざる儲けのカラクリ

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【 カラクリ 1 】 年間会員収入こそすべて

意外に知られていないのは、コストコの利益は会員収入あってこそ成り立っているという事実だ。コストコ(Costco Wholesale Corporation)の2014年度報告書(「FY 2014 Annual Report)を見ると、2014年8月期の主な業績指標は以下のとおりだ(1ドル=118円で計算)。

売上高  1102億ドル(約13兆円)
会員収入 24億2800万ドル(約2900億円)
仕入原価 984億5800万ドル(約11兆6000億円)
販管費  108億9900万ドル(約1兆2800億円) 

実際には、上記の仕入原価と販管費(販売費および一般管理費)に加えて、経費が加算され、いわゆる日本で営業利益とされている金額を出すと、32億2000万ドル(約3800億円)だ。

売り上げに対して利益率は高くないが驚くのは、この利益と会員収入の関係だ。もし、会員収入がなかったとすれば、営業利益は1000億円ぐらいしか残らない。

小売業界ではコストコが販売している商品は「原価ギリギリ」と指摘される。数字を分析すればそれは確かに正しい。原価率は約9割にも上っている。ある意味では危険な、違う言葉で言えば「徹底した顧客志向」を可能にするのが、会員収入にあるといえる。

コストコの正体は囲い込みビジネス

日本のコストコをめぐっては年会費4000円が「お得か、そうではないか」という議論がよくなされる。コストコからすると4000円の会費を顧客からもらうことでビジネスを成り立たせているのである。会員を多く獲得してそれを次年度も継続させられるかが経営のキモになる。

事実、コストコは米国とカナダでは91%もの顧客が会費を続けて払っており、グローバルな視点で見てもその割合は87%に至る。コストコの正体は会員収入を主な利益源とする囲い込みビジネスなのだ。

【 カラクリ 2 】「安くても高品質」を支える商品群

一度来店した顧客をリピーターにさせるためには、粗利益を削るだけではなく、やはり商品そのものの良さが必要だ。そこでコストコが採っている戦略が商品点数の絞り込み。あれほど大きな店舗でありながら、きわめて少ない商品で勝負している。

年度によってバラツキはあるものの、最新の年度報告書を見ると、コストコの商品数は実は4000程度しかない。これによって、メーカーやブランドとの結びつきが強化されている。バイヤーがしっかりと確認した品質の良い商品を陳列でき、一品あたりの取引額が多くなるため、安価に仕入れることができる。つまり、バイイングパワーが強くなる。サプライヤーとの結びつきも強くなり、商品開発や納期調整などに強い影響力を発揮できる。

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