「維新流改革」は「次」に何を目指しているのか 「国政政党」「改革保守」としての課題と挑戦

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この3点以上に大きな課題は、国政政党としての路線と政策だろう。地方分権や地方自治のあり方などを含めた統治機構の問題、行政改革や財政改革など内政のテーマでは、2010年4月の大阪維新の会結党以来、12年余の積み重ねから、対応能力ありと見ることもできるが、維新の弱点は外交、安全保障、国際経済・金融への取り組み、マクロとミクロの両面の経済政策など、未知数の分野だ。

ロシアのウクライナ侵攻、「台湾有事」をめぐる米中対立や朝鮮半島をめぐる緊張の激化など、世界的な安全保障の危機の下で、維新は今後、外交、防衛、さらに緊急事態への対応や防衛政策との関係で議論が高まる憲法問題といったテーマにどんな姿勢と方針で臨むのか、早晩、回答を迫られ、国政政党として存在意義が問われる。

宿題は多いが、地域発の新型政党による12年の新しい挑戦は、旧来型の政党政治に新風を吹き込んだだけでなく、見えない部分で日本政治の構造と体質を徐々に変革させてきたのは疑いない。その点で、今、維新が果たしてきた役割を点検すべき時期に来ている。

維新流改革を日本政治のスタンダードへ

これまでの歩みから、維新政治の特質として、「地域での自民党分党による新党結成」「本格的な地方分権と地域主権の追求」「大阪での行政掌握による実験」「地域政党の国政進出とその生命力の維持」「地方自治体の長や地方議員と国会議員が対等という党内構造の初の分権型政党」「国政で与野党の枠にとらわれない是是非非路線」といった点を挙げることができる。

もし松井代表の提唱どおりに、維新が国政で野党第一党となる日が来るとすれば、これらの維新政治の特質が、国民全体の半数に近い人たちの支持と共感を得たことになる。つまり維新流の変革路線を「日本政治のスタンダード」とするための第一歩が野党第一党到達、というのが維新の設定目標に違いない。

維新流の変革とは何か。「日本の統治システムを中央集権国家から分権型国家に」「東京一極集中型の政治から地域分散型の政治に」「伝統的な保守と改革保守を対立軸とする政治に」「自民党の分党を実現して是是非非路線による新しい政党政治に」といった方向を志向していると見て間違いない。この路線が、大阪とその周辺だけでなく、全国的に幅広く支持を集めることができれば、維新流の変革路線が「日本政治のスタンダード」と認められる可能性があるが、壁は高い。

維新政治は日本の政治の構造を変える起爆剤となるかどうか。決め手となるのは、政党・維新とその政治・行政の虚実を見抜く全国の有権者の鑑識眼である。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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