「まともな会社で働いた事ない」45歳男性の闘争 深夜残業に一方的な減給、パワハラ、即日解雇…

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実家は、首都圏にある共働き家庭。家計は裕福とはいえなかった。高校卒業後、大学ではなく専門学校を選んだ理由は「勉強が嫌いだったことと、お金の問題と、半々くらい」。

多くの新卒者と同じく就職活動には苦労した。なんとか採用されたのは、専門学校の専攻とはまったく関係ない全国チェーンの飲食店。しかし、「朝から晩までぶっ通しで働き、サービス残業もあった」。休憩どころかトイレに行く時間も取れない日々に耐えきれず、1カ月で辞めた。

その後、数年間のフリーター時代を経て正規雇用の事務職に就いたが、ここも定時には終わらないほどの業務を任された。当然のように残業手当はなし。帰宅は連日深夜となり、1年もたなかった。

続いて物流関係の会社に転職。契約社員として仕事はそつなくこなしたが、何年働いても正社員にはなれそうになかった。当時は5年を超えて契約更新を繰り返せば無期雇用転換できる法制度もなく、勤続6年を機に退職。「同じような仕事をしている正社員から威張られることにも嫌気がさした」とハルキさんは振り返る。

正社員の仕事を求めて地方都市へ

正社員の仕事を求めて地方都市に移り住んだこともある。路線バスの運行を手がける会社の事務職だったが、ここではパワハラ被害に遭ったという。

ハルキさんの仕事の1つにアルコールの呼気検査があり、規定値を超えたドライバーを乗務から外そうとしたところ、なぜかハルキさんのほうが社長から叱責されたのだ。どうやらそのドライバーは社長による縁故採用だったらしい。以来、何かにつけて目を付けられるようになり、ついには基本給が大幅に下がる関連会社への出向を命じられてしまう。

ハルキさんによると、この会社では、一部のドライバーが呼気検査をクリアしないままハンドルを握ることがたびたびあった。車両の定期点検もおざなりなうえ、乗降者数を水増しして自治体からの補助金も不正に受給していたという。

「働き手をないがしろにする会社は安全管理もずさんなんです」とハルキさん。このころには、断続的に心療内科を受診する状態で適応障害などの診断を受けていた。

出向先の会社は宿泊施設。気持ちを切り替えて臨んだものの、40歳を過ぎて初めて経験するホテルの接客業務にはなかなかなじめなかった。長年働いている派遣社員から「正社員のくせに覚えが悪い」と嫌味を言われ、メンタル不調が悪化してしまう。結局休職の末、退職を余儀なくされた。

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