技術はほぼ完成「リニア新幹線」車両開発の系譜 60年前に実験開始、あとは開業させるだけ

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L0系900番台をブラッシュアップさせたL0系950番台が、2020年春に登場した。基本的には900番台の仕様であるものの、さらなる居住性と安定した運行が可能なように改良されている。

製造された950番台は、先頭車と中間車を1両ずつ製造し、従来の900番台の編成に組み込む形で、運行されている。900番台では車内電源用に火力によるガスタービンを利用した発電が行われており、最新鋭の乗り物にガスタービンを搭載するというなんとも奇妙な状態だったが、950番台からは誘導集電方式を採用し、車体が浮いた状態でも地上側からの電力の供給が行われる方式になっている。そのため100%給電が行われたことにより、発電機の搭載はされていない。

先頭形状もタービンの排気口がなくなり、前照灯や前方監視カメラも、視野の良い上部に設置された。併せて先頭形状もより改良されたことにより、空気抵抗や消費電力、騒音の軽減などもされている。

鉄道ファンからは前方監視カメラと前照灯が上部に移動したことにより、ようやく列車らしい顔つきになったという声も上がっている。

車内の居住空間についても天井を高く見せるために、平滑形状に整形し、白を基調とした車内には、清潔感が漂う。座席も座ると安心感があり、優しく包まれる耳部分のバケットを拡大して、まるでソファのような座り心地である。所要時間は短くとも、快適な居住空間を約束してくれるはずだ。

あとは開業させるだけ

現状、東京―大阪間の輸送の主役は東海道新幹線である。もちろん、高速バスや航空機による輸送も存在するが、鉄道輸送に比べると、輸送量や輸送頻度などを総合的に考えれば、東海道新幹線の主役の座はゆるがない。

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近年国内で、地震や台風などの自然災害が毎年のように起きているが、災害によってもしも、東京と大阪の2大都市の交通が寸断されてしまったら、防災や復興はもちろん、国益からも、その影響は計り知れない。そのためにも、新幹線のバイパスとしても考えられるリニア中央新幹線の存在は、極めて重要である。

静岡県とJR東海の間で大井川の水問題などが解決せず、静岡工区ではまだ着工できていないが、リニア中央新幹線の問題は直接国民全体に影響しうる問題である。リニア中央新幹線の開業は、日本の未来を左右する。技術は完成している。あとは問題を解決し、「開業させるだけ」なのである。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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