技術はほぼ完成「リニア新幹線」車両開発の系譜 60年前に実験開始、あとは開業させるだけ

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1962年に国鉄の技術研究所で始まったリニアの実験は、その後、1977年に宮崎県の日向市に実験線(延長7km)を有する「浮上式鉄道宮崎実験センター」を開設。1995年には有人での走行実験で時速411kmを成功させている。

MLX01の車内(展示時、筆者撮影)

しかし、最高時速500km超の実験には、もっと長い距離を必要とし、トンネルや勾配、鉄橋などの地形条件も加味した実験線が必要という判断から、1996年に宮崎実験センターでの走行試験が終了。その後は現在の山梨実験線で試験が行われている。同実験線は1997年に先行区間の18.4kmが完成し、車両も営業車両を意識した従来のものより大型な「MLX01」が製造された。

この車両は最長5両編成で運行することができ、先頭車両の長さは28mと、従来の新幹線車両よりも3mも長く、ノーズ部分は「エアロウェッジ型」(下部が曲線のくさび型形状)と、「ダブルカスプ型」(アヒルのクチバシのように下部が平な形状)が採用されている。これは宮崎実験線で経験した高速時における空力特性を考慮した結果である。2003年12月2日には、当時の鉄道史上最高の時速581kmを記録した記念すべき車両でもある。

営業仕様の車両が登場

L0系は超電導リニアの車両として本格的に営業用仕様として製作された車両で、「L」はLinear(リニア)を、「0」はかつての0系新幹線と同様に営業線仕様の第1世代車両という意味があり、スタートの「0」という意味だ。

L0系900番台は2013年に走行試験を開始し、山梨実験線では最長12両編成を想定した設計となっている。そのため、乗車定員を約700名以上(先頭車最大24名、中間車最大68名)とし、MLX01に比べて、より営業開始に向けて実践的な車両と言える。営業運転時は16両編成の想定だ。

L0系登場以降も様々な試験が行われているが、その内容もこれまでの速度向上だけでなく、実運行に近い形態で車両性能や環境データも測定している。2015年4月14日に行われた走行試験では、1日の走行距離4064kmを記録。さらに同月21日に現在の鉄道車両最高速度である「時速603km(有人運転)」を記録した。時速600kmを超える鉄道車両は、2022年現在もL0系以外に存在しておらず、完成度の高さがわかる。

さて、L0系は営業用先行試作車といったところでもあり、居住関係も今までにない充実した内容になっている。2&2の2列に配置されたシートピッチは、とても快適でゆったり座ることができる。座席は従来の新幹線のものよりもシンプルに見えるが、座り心地にあまり変化はないようだ。
客室内には列車前方を見ることができるモニターが設置されていて、現在速度も表示されている。これはトンネルやガイドウェイによって、窓からの景色を見るのが難しいことに対する配慮があったのではないかと推測できる。

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