
日本では赤字国債発行を禁止するルールがあるものの、毎年のように「特例公債法」を成立させて赤字国債を発行しており、ルールの形骸化が指摘されている(撮影:梅谷秀司)
過去数十年にわたって、先進諸国はある共通の問題に直面してきた。慢性的な財政赤字と政府債務残高の累増である。例えば、1991年から2019年までの間にG7諸国のすべてにおいて国債残高の対GDP(国内総生産)比が上昇した。この現象についての経済学者の見解は、「過剰な財政赤字や政府債務がマクロ経済に負の影響を及ぼす」ということでおおむね一致しており、規律ある財政運営を実現する方法について活発な議論が行われている。
そもそも、過剰な財政赤字はどのようにして生じるのか。この問題に、従来の経済学は十分に答えることができなかった。一般的な経済学では「どのような政策が好ましいか」という分析に主眼が置かれ、「なぜ、好ましくない政策が実現するのか」については分析の対象外だったためである。
対して、筆者が専門とする「新政治経済学」と呼ばれる分野は「民主主義社会では投票を通じて政策が決定される」という側面に注目し、「どのような社会で、過剰な財政赤字を伴う政策が選択されるか」を明らかにしようとしてきた。ここではその回答のうち代表的なものとして、「高齢化」と「現在バイアス」を紹介する。
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