競争率1000倍、サウジ鉄道「女性運転士」大募集 研修生枠は30人、従来の「タブー」打ち破る英断
女性がこれまで鉄道の運転士に就くことができなかったサウジアラビアならではの例として、こんなケースがある。
リヤドに、プリンセス・ヌーラ・ビント・アブドゥル・ラーマン大学(PNU)という女子大学がある。学生数は6万人、キャンパスの面積は1300ヘクタールあり、これは東京ドームのおよそ280倍の広さだ。キャンパスが広すぎるため、校舎間などの移動に乗り物が必要ということになり、全長11.5km、途中駅が14もある自動運転メトロシステムが走っている。
自動運転を導入した理由として、現地では「女性には運転士をさせられないが、男性を女子大キャンパスに入れるのは不適当」という判断があったから、とも言われている。同メトロの運営は、日立製作所鉄道システム事業グループ会社の日立レール社が担当。同社の資料によると、PNU校内を走るこの路線は2011年5月に完成、1編成の定員は110人、22編成が最高時速60kmで運行し、毎日およそ6万人の学生の校内移動の足となっている。
6カ国を結ぶ新鉄道計画も
サウジアラビアの鉄道の歴史をひもとくと、20世紀初頭にダマスカス(現在のシリア)からヨルダン領内を通り、アラビア半島北西部を通ってメディナまで至っていた「ヒジャーズ鉄道(Hejaz Railway)」という路線に行き着く。
当時のオスマン帝国が1900年に建設を開始、1908年には完成した同鉄道の総延長は1300km超。メディナへの巡礼客を運ぶのに大いに重宝されたが、最終的にメディナからメッカへ向けての敷設が終わらないうちに、第一次世界大戦中に徹底的な破壊に遭う。この破壊に関するエピソードを題材にしたのが、往年の映画『アラビアのロレンス』だ。ロレンスとはトーマス・エドワード・ロレンスという実在した男性で、ゲリラ部隊を率いて、ヒジャーズ鉄道を徹底的に破壊した。
こうした経緯もあって、サウジアラビアの人々にとってメディナ―ジェッダ―メッカ間の高速鉄道は長年の夢がようやく実現したともいえる。
つい数年前まで観光客さえも拒んできたサウジアラビアだが、今後はHHRだけでなく、東海岸に「ガルフ鉄道」なる新規路線が計画されている。これは、アラブ湾岸協力会議 (GCC) メンバーの6カ国を結ぶもので、サウジアラビアとクウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーンをつなぐ足となる。
新しい鉄道が生まれる際には、それに従事するスタッフに女性を登用する機会もさらに増えるだろう。イスラム文化に育まれたユニフォームをまとった女性鉄道員たちが働く姿がより多く見られる日が来ることを楽しみに待ちたい。
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