定年前の会社員が確定拠出年金で絶対すべきこと 制度を知らずに手続きをすると大損することも

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国民年金と聞くと、自営業の方が加入する制度と思われがちですが、Aさんのような会社員は、国民年金に加入し、さらに厚生年金に加入しています。したがって、60歳以降会社員として働き続けると、国民年金の被保険者となります。

Aさんは、継続雇用での給与を35万円程度と見込んでいます。もし仮にiDeCoの掛け金上限額である月2万3000円を積み立てると、所得税と住民税合わせ年間5万5200円の税制メリットが享受できそうです。

ではiDeCoに継続加入できない人はどういうケースでしょうか? 例えば5歳年下の扶養の奥様は、Aさんが会社員でいる限り、これまでどおり第3号被保険者のままでいられます。しかし、第3号被保険者は59歳までなので60歳以降は国民年金被保険者ではなくなります。

これは第1号被保険者、例えば自営業の方も同じです。国民年金の加入義務は59歳まで、60歳以降は「任意加入」となります。任意加入は過去の未払い保険料等を後払いするための制度ですから、20歳から60歳までの40年間、しっかり保険料を払った方は国民年金被保険者にはならず、したがってiDeCoへの加入もできません。

iDeCoを継続する場合の「2つの選択肢」とは?

さて、Aさんの確定拠出年金の話にもどりましょう。少しでも老後のゆとりを増やすためにiDeCoは継続したいAさんですが、その場合2つの選択肢があります。①会社の企業型確定拠出年金の資金をいったん受け取ってしまってiDeCoに改めて新規で加入する。②これまで積み立てた企業型確定拠出年金の資金をiDeCoに移し、そのうえで積み立てを継続する方法です。

Aさんの確定拠出年金の状況を拝見すると、「なんとなくよさそうだから」と選んだバランスファンドが好調で結構な利益がでています。筆者は、定年時に退職金と確定拠出年金の資金を一緒に受け取るケースと、確定拠出年金の資金を65歳以降に退職金とは別に受け取るケースの税金の違いをご説明しました。

前者の場合、退職金と確定拠出年金が合算され、会社の勤続年数によって計算された退職所得控除を差し引きます。37年間勤めあげて退職するAさんの退職所得控除は1990万円です。Aさんに伺うと、その合算額はちょうどこの控除の枠内におさまりそうなので、課税されることなく受け取れそうだとわかりました。

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