「MMTは法的に底が抜けている」という根本的誤解 「財政論議の混乱」は相変わらず続いている

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第3に、白井教授は「インフレ調整のために柔軟に歳出・税収の調整ができることが大前提だ」と述べたうえで、「極度の高インフレが起きた場合、国民に不人気な増税を迅速に断行できるのか」と指摘する。これは、よくあるMMT批判ではある。しかし、インフレ調整のための手段は、歳出・税収の調整だけではないことは、過去の論考何度も指摘した通りだ。

「経済史を振り返れば疑問が残る」

第4に、白井教授は、極度の高インフレを増税で抑制できるのかについては「経済史を振り返れば疑問が残る」と書いている。

確かに、MMTは、財政支出の拡大が需要の増大を通じてインフレをもたらすことは認めている。増税のインフレ抑止(デフレ)効果も認めるだろう。

では、経済史上、財政支出の拡大が行き過ぎて「極度の高インフレ」になった事例というのは、あるのだろうか。

第一次世界大戦後のドイツ、終戦直後の日本、ソ連崩壊後のロシアなど、「極度の高インフレ」の事例は、いずれも、戦争や経済制裁による極端な制約や、無政府状態といった異常事態によるものばかりだ。

また、1970年代の高インフレであれば、主に石油危機に起因するものであるし、現下のインフレも、コロナ禍やウクライナ戦争といった特殊な外的要因による供給制約がもたらしたものだ。

いずれも、財政支出の拡大による過剰な需要が抑止できなくなったせいではない。とりわけ、需要増加ではなく、供給制約に起因するコストプッシュ・インフレは、そもそも、増税によって抑止するようなものではない(17人のノーベル経済学賞受賞者が、インフレ抑制のために「積極財政」を求める理由)。

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