撮り鉄が荒れない、東武鉄道「SL戦略」演出の妙技 毎日運行して混雑を回避、他社の手本になる?

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ここのところ「撮り鉄が暴走」などというニュースを見ることが多くなったが、多くは間もなく廃止される列車や、引退する車両、また、2日間限定のような列車が運行する場面で起こっている。その点、東武の運行方法は混乱もなく、鉄道ファンや家族連れも満足できるもので、SL列車運行が、日光や鬼怒川温泉地区の観光振興につながってほしいと感じる。コロナ禍が終息して、再び日本を訪れる外国人観光客が増えれば、台湾の鉄道ファンなどにも人気が出るのではないかと思う。

また、日本の鉄道ファンには、「希少な車両」「廃止される列車」ばかりに執着せず、鉄道全体の活性化に目を向けてほしいとも思う。近年の傾向は、私の眼には「鉄道ファン」というより、「消えていくものファン」と映ってしまう。

思い出に残るのは「編成写真」ではない

さらに、鉄道ファンにとって鉄道写真を撮ることは趣味活動のメインであるが、近年はその鉄道写真に個性を感じなくなった。邪魔なものがなく、車両全編成が写ったものがよいという傾向が強くなっているのではないだろうか。

走行している編成写真を1枚は押さえておきたいという気持ちは理解できるが、ひな壇のようになって全員が同じ位置から同じアングルで撮っていたのでは、全員が同じ写真を撮っていることになる。しかし、後々思い出となる写真は判で押したような定番アングルではない場合が多い。

杉木立からの木漏れ日を浴びながら列車を押すDE10(写真:谷川一巳)
沿線の緑のなかを駆け抜ける展望車(写真:谷川一巳)

今回の東武SL列車日帰り旅で撮った写真のなかで、お気に入りの写真を2枚紹介しておこう。

1枚は車両最後尾の窓越しに撮った杉木立のなかを行くDE10。もう1枚は林の中を行く列車を展望スペースで撮ったものだ。

この2枚はカメラではなく、スマホのカメラ機能で撮ったものだ。

三脚に高級一眼レフカメラを据えて撮るだけが鉄道写真ではない。東武のSL列車を、カメラを持たずスマホだけで訪ねてみるといった楽しみ方もありではないかと感じたのである。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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