撮り鉄が荒れない、東武鉄道「SL戦略」演出の妙技 毎日運行して混雑を回避、他社の手本になる?
1日を振り返ると、ずいぶん効率よく、SL列車を「撮って、乗って」楽しめるように工夫されていると感じた。これなら次回は鬼怒川温泉あたりに1泊して、SL列車をじっくり体験するのもいいかなと感じた。
一般に、SL列車の運転日は人が集中し、子供連れや鉄道ファンが多く詰めかける。人が多いとどうしても駅員や乗務員は「列車から離れてください」「危ないですよ」と神経質にならざるを得ないが、そういった光景がまったくなかった。それどころか、鉄道ファンの心理が分かっているのか、ホームでも撮影できるような位置に停めてしばらく停車させ、撮影タイムのような時間を作っているように感じた。1日が終わって、まったくストレスがなかったのである。
訪れた人が満足する演出
よく鉄道ファンから、SL列車などは「乗ると撮れない」し、駅が人混みとなるので、本当は乗っても見たいのだが、「車に乗って沿線で撮影するしかない」という話を聞く。鉄道会社としては、せっかくSL列車を走らせても、車で来て撮影だけされたのではまったく収益につながらない。その点、東武は上手なSL列車運行を行っていると感じたし、訪れた人が満足して帰れるような演出も心掛けているのではと思った。
平日だったせいもあるのかもしれないが、沿線に鉄道ファンはいるものの、その数はまばらで、場所取り、ひな壇、罵声などといった光景とはまったく無縁であった。実に和やかな雰囲気で、ヨーロッパのSL保存鉄道を思い出してしまったくらいである。
車両的にはC11形蒸気機関車、14系客車、DE10形ディーゼル機関車と、すべて国鉄形車両であり、いわゆる鉄道ファンにしてみれば注目車両ばかりである。にもかかわらず、沿線が殺伐とした雰囲気にならない理由を考えてみると、どうも答えは「毎日運行」なのではないだろうかと思う。
東武はSL列車運行に力を入れており、3両目の蒸気機関車も準備中である。メンテナンスなども自社で行っている。そのため毎日運行することが可能なのである。
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