人は2000連休を与えられると一体どうなるのか? 開放感と怠惰にひたる至福の日々は一瞬で終わる

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今日、久しぶりに一時間ほど歩いた。汗だくになって気持ちがよかった。自分に身体があることを思い出した気がした。

日常に運動習慣を組み込んだほうがいいかもしれない。深刻な運動不足になっていた。現在の生活ではコンビニやスーパーに行くだけで生活が完結してしまう。運動は大事だ。汗だくで実感した。この爽快感を忘れていた。どうも自分は運動が不足しやすい。マンガ、音楽、ゲームにパソコン。行動パターンは室内でできることに極端に偏っている。これはよくない。自分のような人間に勤務先がなくなると、ここまで外に出なくなり、ここまで運動をしなくなるものなのか。

カフェの仕事は生活費を稼ぐことが目的だった。しかし運動不足の解消にもなっていたのだ。トレイを持って店内を歩き回る。厨房でサンドイッチを作る。客が来るたびに大きな声で「いらっしゃいませ」と言う。ハードな肉体労働とはとても言えなかったが、あれもまた運動だったのだ。トレイは軽量のダンベルだ。あいさつは喉の筋トレだ。そんなことを言われれば当時の自分はギャグだと思っただろうが、今は実感をこめて真顔で言える。運動不足の人間には、カフェの仕事さえ筋トレになるのだ。今日から毎日運動しよう。

昔を思い出して鬱になる

物置に住みついて十ヶ月が過ぎた。連休が続いているのだろうか。よく分からない。

とりあえず意識はぼんやりとしたままだ。鬱々としている。 

結局、運動もしていない。決意は数日で途絶えた。だいたいが夕方に起きて早朝に眠ることも多く運動をする気分にもなってこない。

最近、やたらと昔のことを思い出す。過去のさまざまな記憶の断片が脈絡なく飛び出してくる。そのたびに感情が揺れ動く。日常から刺激が消えたからだろうか。脳が無理やりに刺激を作り出そうとしているのだろうか。どうでもいいことを次々と思い出す。

思い出したくない。過去なんてどれも終わったことだ。現在には存在していない。思い出す必要がない。しかし記憶は噴出する。大量の疑問も噴出する。

これまでの自分の人生は何だったのか? 自分は何のために生きていたのか? 自分に夢や目標はあったのか? それは本当に自分の夢だったのか? 自分は今後どうすればいいのか?

人は2000連休を与えられるとどうなるのか?
『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』(河出書房新社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

人生についてまじめに考えてこなかったことのツケが、まとめて回ってきている。今後どうすればいいのか分からない。世界のマニュアルが欲しい。

自分には、意志というものが欠けている気がする。

自分の中に、強い拒絶の感覚がある。世間を拒絶しているのか、人間を拒絶しているのか、この世界自体が嫌なのか。そのあたりが自分でも分からない。世間の価値観を拒絶しているならば、それに反抗し、自分の信じる価値観を強く主張することもできそうな気がする。そうした方向にも進まない。世間に反抗するほどの強固な自我もない。

思えば、何の芯もない人生だった。

私は、今の自分をなんとかしたいと思う。しかし、どうすればいいのかが分からない。

第2回:「2000連休を過ごした男に見えた生活リズムの真実」(5月5日配信)に続く

上田 啓太 ライター

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うえだ けいた / Keita Ueda

1984年生まれ。石川県出身。京都大学工学部卒。2010年、ブログ『真顔日記』開設。累計1000万PVを超す人気ブログに。オモコロ、ジモコロ、文春オンライン、cakes、GINZA等、多媒体で執筆。

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