車掌を辞め鉄道模型YouTuberへ転身した男の人生 働き方改革に直面するミレニアル世代のリアル

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ススクマさんは、さっそく転職活動を始めたが、「これまで鉄道会社で車掌の道を極めようとして働いてきた自分には他の業種で活かすことのできるスキルがない」現実に直面した。

自作の鉄道模型をバックに笑顔のススクマさん(写真:susukuma)

とはいえ、このまま車掌を続けても10~20年後には確実に自動化の波に呑み込まれていずれは車掌の仕事はなくなってしまう。そうしたことから「いろいろな仕事にゼロからチャレンジして、その中から自分に合った職業を見つけよう」と2019年末、覚悟を決めて退職という決断に至った。

退職後は、就職活動を続ける一方で、まとまった時間が取れるようになったことから、それまで趣味の一環でたまに行っていたNゲージ鉄道模型の動画投稿を本格的に始めた。2020年2月に自宅の鉄道模型ジオラマの紹介動画を投稿したところ思いのほか再生回数が伸び、そのまま動画投稿を継続。当初は100人ほどだったチャンネル登録者が2020年4月には1000人を突破した。しかし、本業とするには収入が少なかったため、この時点では「ユーチューバーとして生きる道はあくまでも選択肢の一つ」と考えていた。

「まわりを見返してやりたい」

その後も順調に登録者数は伸び続けた。途中「再生数が伸び悩み、つらい時期もあった」ものの「まわりを見返してやりたい」という思いが動機となり、成果が出るまでやり抜くことができたと振り返る。

また、当時は都内にある親戚の空き家を借りて住んでいたが「諸事情により2020年内には引っ越さなければならなかった」こともあり、長期的なユーチューバーとしての活動も視野に入れ広いスペースを求めて地方移住を決意。北関東のとある町に自分の貯金の範囲内で買える格安の中古の一戸建てを見つけた。共働きの妻からも「これまでの不規則な勤務形態が解消されて生活の基盤をしっかりと築くことができればそれでよいのでは」と背中を押してもらうことができた。

鉄道会社を退職してから約1年。ユーチューブの収益がようやく安定してきた。さまざまなチャレンジと試行錯誤の結果、見つけることができた適職。それが鉄道模型ユーチューバーとして生きる道だった。

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