非公開化などの再編スキームを公募するという異例のリリース。しかし金融関係者の関心は、フィナンシャルアドバイザーに就いた野村証券に集まった。
経営の混乱が続く東芝は4月21日、異例のリリースを発表した。
タイトルは「潜在的な投資家及びスポンサーとの協議開始に関するお知らせ」。こうしたリリースは通常、株式市場が閉まった直後に発表されるが、19時45分という遅い時間の発表に市場からは驚きの声が上がった。
その内容は簡単に言えば、定時株主総会前に株式の非公開化を含めた再編の提案を公募するというもの。ほかの買収者が対抗的な提案を行う機会を確保する「マーケットチェック」に近い。欧米のM&Aでは当たり前に実施するものだが、日本でこれを公表する形で実施した例はほとんどない。
FAはゴールドマン・サックスではなかった
東芝をめぐっては、2021年11月にグループ全体を3分割する計画を公表。その後2022年2月に2分割する計画に修正し、3月下旬の臨時株主総会で賛成を得て手続きを進める方針だった。
だが、臨時総会で株主の反対により分割案は否決。東芝は4月7日、再編について検討する特別委員会を立ち上げたものの、その行方は混沌としている。
リリースでは公募の手順が具体的に示された。まず法的拘束力のない形で投資家を募集。株式の取得価格や買収資金の調達方法、改正外為法など規制に絡む実現の可能性などの基準をもとに投資家の提案内容を評価する。提案の数や再編の手法は、6月の定時株主総会前に公表される。
第一段階の評価を経て次の段階に進んだ投資家に対し、東芝の財務や事業に関する詳細な情報を提供して資産査定の機会を設ける。そのうえで「法的拘束力のある提案」をしてもらうとしている。
だが、東芝のリリースを見たファンド関係者や証券会社幹部が注目していた点はほかにもある。それは、フィナンシャルアドバイザー(FA)に野村証券が就任していたことだ。
これまで東芝は、ゴールドマン・サックスと関係が深いといわれてきた。実際、2017年に6000億円の増資をした際、ゴールドマンが単独で主幹事を務めたほどだ。にもかかわらず、なぜ今回、野村証券に乗り換えたのか。
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