自動車産業のEV(電気自動車)シフトを背景に右肩上がりに上昇してきたリチウム相場が、8カ月ぶりに値下がりに転じた。車載電池の主原料の1つである炭酸リチウムの4月12日時点の取引価格は、1トンあたり49万6000元(約975万円)と前日より4000元(約7万8652円)下落。3月4日以降で初めて50万元(約983万円)を割り込んだ。
リチウム相場の下落は、2021年7月下旬以降ではこれが初めて。とはいえ、その間の急激な値上がりに比べれば下落幅は微々たるものだ。2021年8月に初めて1トン当たり10万元(約197万円)を超えた市場価格は、その後わずか半年余りで同50万元を突破していた。
「今回の相場下落は、EVメーカーの生産停止の影響が大きい」。財新記者の取材に応じたあるリチウム関連企業の責任者はそう話す。
背景には、中国有数の自動車産業の集積地である上海市が、3月末から新型コロナウイルスの流行を封じ込めるためのロックダウン(都市封鎖)を実施した影響がある。その余波で、アメリカのテスラや中国の蔚来汽車(NIO)を含む多数のEVメーカーが、中国国内の工場で減産や生産停止を余儀なくされた。
原材料の奪い合いは緩和も
ロックダウンの影響に加えて、季節的な要因も相場の重しになった可能性がある。「需要家には春節(中国の旧正月、今年の元日は2月1日)前後に在庫を集中的に積み増す慣習がある。例年4月から7月は買い付けのシーズンオフで、この時期に相場が若干下がっても不思議はない」。中国国内でリチウム取引に携わる関係者はそう解説する。
一方、中国で新型コロナの流行が再拡大している影響について、国金証券のアナリストは「電池メーカーなどの需要家は一般的に2カ月分前後の原材料を備蓄しており、生産面へのインパクトは短期的には大きくない」との見方を示した。
また、あるリチウム生産企業の関係者は、今後の見通しについて次のように語った。
「需要家の在庫回転の周期を考えれば、EVメーカーの減産で直ちに原材料の供給がだぶつくとは考えにくい。とはいえ、以前に比べて原材料の奪い合いは緩和されるかもしれない」
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は4月12日
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