社員が「DXで疲弊」する会社にありがちな3大失敗 DX人材が育てばDXが成功するわけではない

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しかし私が見てきたケースでは、DXへの取り組みがどちらかというと社内向けのパフォーマンスや、社外へのPRになってしまっているように見える企業もありました。こうした企業は、「多様な研修コースを用意しました」「コースの履修率は何%です」、といった数値目標ばかりにこだわるあまり、本来の業務プロセスの変革などに取り組めていなかったり、後回しにされていたりします。これでは、社員から「何のためのDXなんだ」「ああ、俺たちはパフォーマンスの道具にされているのね」と思われてしまうのも無理はありません。

お客様により喜んでもらえるようになる、あるいは自分たちの業務のミスが減り、効率的になる、といった具体的なメリットがあれば、社員たちも「研修は大変だけど、いっちょ学んでみるか」と前向きになるはずです。

変革に及び腰になっていないか

もう1つの失敗パターンが、トランスフォーメーション=変革に取り組めていないケースです。顧客への提供価値を変えたり、社内の生産性を高めたりするためには、既存業務やプロセスの抜本的な見直しが必要です。聖域なき変革が必要なはずです。それが、「この業務は課長の承認は欠かせない」「この作業は伝説のあのOBが作った方法なので外せない」「あのパートナー企業とは長年懇意にしている仲なので外せない」と、変革に及び腰になっていないでしょうか。

その結果、「DX推進」を掲げながらも、既存業務の一部をデジタル化するだけ、業務のプロセスそのものは変えずに、自動化できるツールを最小限導入するにとどまる、といったケースは少なくありません。「承認プロセスが複雑で……」「セキュリティの問題があって……」といった言い分も聞こえてきますが、よくよく事情を聞いてみると、企業側が既存の業務やプロセスを手放せていない、ということはよくあります。

企業が変革を避けていることを、現場の社員はすぐに感じ取ります。「会社は過去に何度も変革に取り組むといってきた。今回こそ、本当に変わるのでは、と思ったのに、やっぱり今回も本気じゃなかったのか……」と。

こうしたことが続いていけば、「忙しい中で、社員にだけ研修を押し付けられても困る」という厭戦気分が社内に蔓延していきます。まずは業務の全体を見渡して、整理し、断捨離をすることが必要です。

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