バイデン米大統領は3月31日、戦略石油備蓄からの前例のない規模の放出を命じた。議会の中間選挙を今年後半に控え、気候変動対策の推進者として評価が損なわれるリスクを冒してもガソリン価格を押し下げることを優先した。
戦略が奏功すれば、バイデン氏はリセッション(景気後退)と民主党大敗の両方を回避できるかもしれないが、環境団体の反発を招き、自身の掲げる温暖化対策目標から脱線する恐れも伴う。失敗に終わる可能性もあり、そうなれば、中東の産油国から見放されてガソリン価格高騰になすすべもなくなったカーター政権の二の舞となるリスクがある。
気候変動対策で代替エネルギーへの転換加速や公有の土地・水域での掘削許可の阻止などを公約に掲げて当選した大統領にとって、大きな転換だ。向こう数カ月間で最大1億8000万バレルを戦略石油備蓄から緊急放出する命令に加え、欧州への米天然ガス輸出を増やす計画を推進している。
バイデン氏、戦略石油備蓄の大量放出命じる-米企業に増産呼び掛け
ガソリン価格高騰といった深刻な経済問題に対応するバイデン氏の動きについて、大統領の側近らは代替エネルギーや気候変動に関する長期的な目標を損なうものではないと強調しているが、アナリストや気候変動対策の推進者は、明らかな矛盾を指摘している。
コンサルティング会社クリアビュー・エナジー・パートナーズのマネジングディレクター、ケビン・ブック氏は「バイデン大統領は大胆な気候変動プラットフォームを公約に掲げて当選したが、政府が放出する戦略備蓄から生じる石油の燃焼で、過去の政権の合計を上回るカーボンフットプリント(化石燃料から生じる温室効果ガスの排出量)を残す方向にあるのかもしれない」と指摘した。
大統領は、今回の発表で消費者の負担を軽減することが目的だと述べ、国内石油業界に対する批判も演説に盛り込んだ。ホワイトハウスは石油会社の増産が遅れていると批判している。
ディース米国家経済会議(NEC)委員長は、戦略石油備蓄からの記録的な規模の放出について、バイデン氏が気候変動の目標を断念したことを意味しないと説明。「今日の世界の石油・エネルギー市場の状況は、米国が真のエネルギー安全保障と独立性に向かって加速するため必要なあらゆる行動を取るべきであることを示すこの上なく明確なシグナルとなっている」とホワイトハウスでの会見で述べた。
原題:
Biden Embraces Oil as Ukraine War Overwhelms His Climate Agenda(抜粋)
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著者:Jennifer A. Dlouhy、Josh Wingrove
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