大手商社の三菱商事が、ミャンマーにおける天然ガス事業から撤退する方針を固めた。国やENEOSなどの動きが次の焦点になりそうだ。
三菱商事は2月17日までに、ミャンマーにおける天然ガス採掘事業から撤退する方針を固め、合弁事業のパートナーである日本政府などと協議に入った。
同国沖合のイェタグンガス田の採掘に関して、三菱商事は日本政府とENEOSホールディングス子会社のJX石油開発とともにJXミャンマー石油開発の株式を保有している。
【2022年2月18日9時00分追記】初出時の表記を一部修正いたします。
三菱商事の株式の保有比率は10%と大きくないうえ、事業全体に占めるJXミャンマー石油開発の権益の割合も、マレーシアの国営石油ペトロナス子会社やミャンマー石油ガス公社などに次ぐ19.3%にとどまる。だが、同ガス田では生産トラブルが相次いでおり、三菱商事の投資撤退が今後のガス採掘事業の行方に影響を及ぼす可能性がある。
キリンに続き、撤退方針を表明
ミャンマーでのビジネスについては、キリンホールディングスが人権問題を理由に2月14日にビール事業からの撤退を正式発表した。三菱商事の場合、「技術的・経済的な観点から事業継続は難しいと判断した」という。ただ、ミャンマー国内の人権状況が改善しないことも背景にあるとみられる。
欧米やアジアなどの大手エネルギー企業は1990年代以降、ミャンマーの石油や天然ガス採掘ビジネスに参入。石油・ガス採掘からの収益は当時の軍事政権を支えるとともに、民政移管後も政府歳入総額の約1割を占める重要な財源となっていた。
「2021年2月のクーデターを経て国軍が政府を掌握したことにより、石油・ガス事業は再び国軍の資金源になる恐れがある」(NGOメコン・ウォッチの木口由香事務局長)と懸念されている。
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