車載電池世界3位で国内最大手のパナソニックは、ほかの大手電池メーカーと比べて増産投資に消極的だ。追い風の中でも石橋をたたき続ける理由とは。
「本邦初公開、これが『4680』の現物です」
10月下旬、パナソニックで電池事業を展開するエナジー社の只信一生社長は東洋経済などの取材に応じ、箱の中から大事そうに1本の電池を取り出した。満面の笑みを浮かべて披露したのが、開発中の新型リチウムイオン電池「4680」だ。
テスラの新型電池を開発
4680とは、パナソニックの電池事業の主要顧客であるアメリカのテスラが構想し、2020年9月に発表した新型の電池だ。現在パナソニックがテスラ向けに量産している「2170」に比べると、電池容量が5倍、出力は6倍になるうえ、パック化せずに車体に直接組み込むことができるため、工程を減らしてコスト削減につながるという。
4680の開発は、パナソニックのほかにテスラのサプライヤーである韓国LGなども進めているとみられる。只信氏は「テスラの強い要望でやっている」とテスラからの期待の高さを明かす。
テスラのイーロン・マスクCEOは10月に開催された株主総会で、年内にも稼働予定のテキサス工場で生産予定の「モデルY」向けに、来年にも4680の量産を始めると発言している。その生産をパナソニックが担う可能性は高い。
車載電池の世界シェア3位、国内最大手のパナソニックだが、複数の自動車メーカーに電池を供給する中国CATLやLGなどほかの大手電池メーカーとは異なり、供給先はテスラが中心だ。大手電池メーカーがこぞって積極的な投資計画を発表する中、その“投資合戦”とも距離を置いている。
リソース分散を危惧
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