電池の父が直言!「電池戦争」勝負の分かれ目 今日、明日の動きを見て焦らなくてよい

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世界で過熱する電池投資合戦。何が日本の電池産業の未来を左右するのか。「リチウムイオン電池の父」に今後の展望を聞いた。

電池投資が活発化しているが、吉野氏は「今日、明日の動きを見て焦る必要はない」と語った(撮影:梅谷秀司)

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「EV化という観点で、日本はガラパゴス状態」「ハイブリッド車は十分に役目を果たした。ここにしがみついていてもしかたがない」
中国、ヨーロッパ、そしてアメリカ。EV化の流れが加速し、今、世界中で巨額の電池投資合戦が繰り広げられている。
1985年にリチウムイオン電池を発明し、車の電動化の礎を築いた吉野彰・旭化成名誉フェローに今の流れについて尋ねると、冒頭のような“大胆発言”が飛び出した。
ただ、「今日、明日の動きを見て焦る必要はない」とも言う。昨今の電池投資合戦をどう見ているのか、何が日本の電池産業の未来を左右するのか。「リチウムイオン電池の父」に今後の展望を聞いた。

日本の電池産業は崖っぷち

――車載電池に巨大な需要が生まれています。

EV(電気自動車)化の大きな流れは間違いなく来ている。EV大国は中国だというイメージがあったかと思いますが、これからはEU(欧州連合)が追い抜き、世界をリードしていく。アメリカも、バイデン政権に代わったことで同じ方向に動いています。

一方、EV化という観点で日本の自動車業界を見ると、完全にガラパゴス状態です。かつては、エコカーといえばプリウスに象徴される日本のハイブリッド車(HV)でしたが、役目は十分に果たしたわけです。ここにしがみついていても仕方がない。このままいくと、日本の車は海外に輸出できなくなってしまいます。

国内にEV用電池のマーケットがほとんどないものだから、日本の電池産業は崖っぷちですよ。安全性などの品質の高さで差別化できる電池材料メーカーは海外(の電池や自動車メーカー)頼みでまだ戦えるけれど、パナソニックをはじめとした電池メーカーはかろうじて健闘している。

――日本の電池産業は「崖っぷち」からはい上がれるのでしょうか。

EVが主流になるまでのロードマップを考えると、競馬でいえば今はスタートを切ってまだ第1コーナーの一歩手前です。先頭を走っている必要はない。

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