電動車の航続距離に直結する重要部材が、正極材だ。中国メーカーが躍進する中で存在感を放つ住友金属鉱山のモノづくりの極意とは。
創業1590年――。住友グループの源流企業である住友金属鉱山。
伝統的な日本企業の同社が気を吐くのが、電池の容量を決めて自動車の航続距離に直結する重要な電池部材、正極材の開発・生産だ。
正極材に占める住友金属鉱山の世界シェアは2020年の出荷量ベースで世界2位だが、比率は1割弱。ただ、テスラの電池などで採用されている正極材である、ニッケル酸リチウム(NCA)に限ればシェアは6割程度にハネ上がる。同社の生産するNCAはパナソニック、車載電池で主流の3元系正極材(NMC)は主にトヨタ自動車の電池子会社・プライムアースEVエナジーなどに供給されている。
ほかの電池部材と同様、正極材でも中国勢の台頭は著しい。その中でも同社が市場で一定の優位性を築けているのには理由がある。
鉱山権益の保有から材料生産まで一貫
まず挙げられるのが「3事業連携」だ。同社は金属資源・製錬・材料の各事業を一貫して行う。正極材の主原料であるニッケルはフィリピンに鉱山権益を保有している。それを自社で製錬、加工し正極材を作る。
ニッケルを安定的に確保できるうえ、精錬工場から電池材料工場まで原料となる硫酸ニッケルを結晶化させる工程を経ずに運ぶことができるため、コスト的に優位になる。この3事業連携は、世界でも同社のみのビジネスモデルだ。
2つめが品質。同社の正極材が初めて搭載されたのは、トヨタが2002年に発売した2代目プリウスから。およそ20年間、ノウハウを積み上げてきた。同社の阿部功・常務執行役員・電池材料事業本部長は「重要なのはすり合わせ技術。品質管理のノウハウを含め、中韓勢には負けない」と語る。
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