郵政民営化というのは非常に難敵で大変なものです。何が難敵かというと、1つは、元が公務員という出自であり、社風自体の改革が非常に難しいということ。そしてもう1つが、政治との距離を見誤るとちゃぶ台返しがあるということです。
一気に民営化しようとしても、役所時代に培われた文化が変わるわけではありません。その変化を嫌う人たちが大義として持ち出すのがユニバーサルサービスです。
日本中、津々浦々に郵便物を届けるために私たちは郵便局ネットワークを社会的な公器として運営している、という大義を持ってくれば、自分たちは通常の民間企業とは違いますよ、という議論がどうしてもできてしまう。ユニバーサルサービスをビジネスの強みに変えようなどといった逆転の発想は、なかなか出てこないわけです。
ガバナンスも特異です。豪トール社の買収のプロセスを振り返ると、ガバナンスの問題点が浮き彫りになります。民間企業として確実にやるべき手続きとか普通の意思決定が、ないがしろにされてしまった。やはり役所ですよね。取締役会が審議会みたいな形で運営されていて、ガバナンスが利かなかった。会議の段取りを事前にするのが仕事と思い込んでいる役人気質の人が、業務執行を厳しく監督する場所というよりは、お墨付きを与える場所として取締役会を仕切ってしまい、せっかく集めた社外の人材を生かせませんでした。
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