日本の格差を生んだ本当の犯人は誰か?

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 現在、日本の貧困率は先進国の中で2番目に高い。OECD加盟国の中で、可処分所得の中央値の半分以下の所得しかない“絶対的貧困”の割合が増加しているのは日本だけだ。80年代半ばから00年の間に絶対的貧困層は5ポイント上昇した。その増加の約4分の1は高齢化によるもので、残りは非正規労働者の増加によるものである。

多くの人は、絶対的貧困層の増加を小泉改革のせいだと非難しているが、その傾向は小泉政権が発足するはるか以前から見られた。

バブル崩壊以前まで、日本は相対的に平等な賃金をベースにしながら、成長の果実を国民に配分することができた。そのため、政府は大規模な貧困対策を講ずる必要がなかった。しかし、高齢化、成長鈍化、非正規労働者の増加が重なり、貧困問題を解決するために政府は歳出を増やさなければならなくなった。だが、有権者は貧困対策、あるいは貧困対策のための増税を進んで支持しようとはしなかった。

現在、財政赤字の増大に伴い、菅政権と自民党はいずれも歳入を増やす方法を模索している。「家計所得の増加」を目指した鳩山政権は、歳出の増加分を手当てする財源を提起しないのは無責任である、と批判された。現在の日本では、1世紀前と同様に、文化ではなく、政治と経済こそが経済的平等を決定する要因となっているのだ。

(週刊東洋経済2011年1月22日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Richard Katz
『The Oriental Economist Report』編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。

※写真はイメージです。本文とは関係ありません。撮影:梅谷秀司

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