異論に耳を傾けない政権だった
──7年8カ月もの長期にわたった安倍政権について、上西さんはどんな印象を持っていますか。
例えば、小泉政権は「郵政民営化は是か非か」といったような争点をばんと出して、自分の言っていることは正しい、こっちについてこい、という対決型だった。ところが、安倍政権は(政策を)争点化させずに「これしかない」という言い方をする。しかも、これしかないという道をはっきり示さず、あたかも「皆さんのための、この道ですよ」という。
私が政権をとれば(生活は)豊かになります、ビールをもう一杯飲めるようになりますよ、と。経済に強く、安倍さんがいるから私たちの暮らしもよくなるのであって、政権が交代すると大変だ、という見せ方をした。
【2020年9月13日9時0分追記】初出時の表記の一部を削除いたします。
(過労死した元電通社員の)高橋まつりさんのお母さん(の幸美さん)と会って、涙を浮かべる。そういう場面をわざわざつくって報じさせる。(過労死対策に)本気だと思わせるが、いざ法案が出てきたときは論点化しない。(高橋さんの母親のような人を)利用できるときは利用するが、同じ問題で過労死をなくしてくれと切実に訴えても、都合が悪くなると拒絶する。
【2020年9月13日8時13分追記】初出時の表記を一部修正いたします。
そういうのはよく見ていればわかるのだが、その「よく見る人」が世の中にそんなにいない。そういう問題を感じている人が何割かいても、乗り切れる。そういう高慢さがどんどん表面化してきたのが安倍政権の末期だったと思う。
──森友・加計問題のほか、桜を見る会など、スキャンダルの多い政権でもありましたね。
桜を見る会問題など、おそらく(政権存続は)無理だろうというほど(のスキャンダル)だったのに、結局名簿も破棄し、ホテルとの契約だったと言い張って乗り切った。記録がないと(問題を追及する)記者としては決定打がない。
でも根っこのところはつながっている。やりたいことはやる。異論に耳を傾けない。お友達の利害を重視する。(安倍内閣は)印象操作が非常にうまく、キャッチフレーズも巧みだった。メディアを押さえ、野党もそんなに力がなかった。
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