
東京財団政策研究所の森信茂樹氏は「安倍政権が消費税の使途を教育まで拡大したことは評価できる」と語る(撮影:今井康一)
7年8カ月もの長期に及んだ安倍政権下では、2014年4月と2019年10月の2回にわたり、消費税率がそれぞれ8%、10%に2度引き上げられた。
1つの政権で消費税率が2度も引き上げられたのはもちろん初めてのこと。また、2度目の10%への引き上げ時には飲食料品に軽減税率が導入され、消費税の使途は年金、介護、医療のほか、幼児教育・保育の無償化や高等教育の無償化に拡大された。
安倍政権の功罪を振り返る連載インタビューの6回目では、東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹に聞いた。
消費税の使途を教育に拡大した
──安倍政権の税制改革を振り返って、いかがでしょうか。
安倍政権には「新自由主義」というレッテルが貼られている。安倍晋三前首相自身が保守の資質を持っているし、そういう経済政策を行ってきたことは事実だが、実際にやっていることを見ていくと現実主義で、必ずしもそうでない点がある。
1つは消費税率を2度引き上げ、政府の規模を大きくしたこと。(2015年10月と2017年4月にそれぞれ予定されていた消費増税を)2度延期をしたが、引き上げたという事実は大きい。
私は村山内閣時代に(当時の大蔵省で)消費税担当課長を務めていた。村山内閣で消費税率引き上げの法律ができ、引き上げの決断は(村山内閣の後を継いだ)橋本内閣にかかっていた。ところが、橋本さんはなかなか決めない。
消費税率引き上げに先立って3年間先行減税をやっていたのだが、サミットに出席するということで(消費税引き上げといった政策は)きちんと説明しないといけないという本人の自覚から、ようやく決断された。
そういう経緯を振り返ると、安倍内閣における消費税率引き上げの決断は重い。
──1つの内閣で消費税を2度引き上げたことも異例ですね。
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