コロナ危機と気候危機はトレードオフではない
──新型コロナで世界経済が混乱を来しました。これで気候変動問題の位置づけは変わったのでしょうか。
結論から言えば変わっていないどころか、いっそう危機感が増しているというのが現実だ。
地球温暖化問題は長期的、かつ構造的な変化の話だ。コロナが起きようが起きまいが温暖化は着実に進行しており、危機的状況はどんどん進行している。これは日本の政府や企業が気候変動対策を考えるときに、まず念頭に置いておかないといけない事実だ。
6月末に行われたフランスの統一地方選挙(決選投票)では、先進的な環境政策を掲げる緑の党が大躍進した。これは欧州議会、ドイツの国内選挙などの流れを受け継ぐものだ。環境推進派のアンヌ・イダルゴ・パリ市長も、大臣経験者を破って7月に再任した。コロナ危機でも、気候危機を脇に追いやってはいけないという、フランス国民の強い意志の表れだろう。
──コロナ危機と気候危機の両方に、同時に対策を打てますか?
実は、気候危機とコロナの感染拡大対策は、トレードオフの関係にはない。
2つの危機は根っこでは、同じ問題を引き起こしている。それは人間社会が自然界との付き合い方を間違えてしまったということだ。その結果が温暖化、貧困、水、感染症問題といった形で顕在化している。
どの危機も本当に被害を受けるのは、一般の人々だ。こうした人たちに社会構造の一部分を担ってもらっていたからこそ、社会が成り立っていた側面もある。今度のコロナ危機でも一目瞭然だと思う。病院関係者や警察、消防、レストランで働く人たちが頑張っていたから社会が成り立っていた。そして、彼ら自身もコロナ問題に直面する当事者であることを忘れてはいけない。
現在、日本を含めて世界ではコロナ対策として1200兆円ぐらいの財政出動が計画されている。これだけの額の財政出動はそうそうない。より効率的な財政出動にするためには、コロナ対策と気候変動対策と両方に効いてくるような形にする必要がある。
例えば、ヨーロッパを中心にした国々は、「(経済の復興と脱炭素社会への移行を両立させる)グリーンリカバリーこそ大事だ」との旗印を下ろさずに、コロナに向き合おうとしている。日本も大規模な財政出動を行うが、気候危機への意識が十分とは言い切れない。ヨーロッパ各国と日本とでは、5年、10年、そして20年経ったときに気候危機対策に歴然とした差がつく。グリーンリカバリーの世界的な流れを日本もしっかりキャッチアップしていく必要がある。
──2018年にJCIを設立したきっかけは何だったのですか。
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