学術のためか社会のためか、大学機能の難しいバランス
評者・甲南女子大学教授 林 雅彦
「FD」「SD」「IR」「三つのポリシー」「質保証」……。いずれも大学関係者なら誰でも知っている基本用語だ。2年前、大学院卒業以来約30年ぶりに実務の世界から「大学」に戻ってきた評者には、当初、どれ1つわからなかった。
教育は国民の最大関心事の1つである。しかし、大学入試制度には関心が集まっても、近年の大学改革についてはあまり知られていない。本書は、「大学側」当事者による大学改革についての論文集である。
現在、「大学は社会の役に立っていない」という批判の下、経済への貢献が強調され、組織論を援用して、上(政府、実業界など)から戦略的目標、効率性、評価などを軸とした改革が求められている。
そのため、各教員の専門が異なる中で学問の自由、自立性、多様性を基礎とするボトムアップによる改革の動きとの間で対立や葛藤を生む。これは、双方が全く異なる原理や価値をもつためであるとの分析は、実務世界の組織論にどっぷり浸かってきた評者にとっては新鮮であった。そして、この対立や葛藤は実はその両者の間の「対話」であるという見解は面白い。
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