新規上場のgumi、「目標はエンタメ世界一」 國光宏尚社長に戦略を聞く(上)

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「日本のIT業界には言い訳が渦巻いていた」と國光社長

通信環境も国ごとに違う。日本は定額制の高速通信サービスが普及しているからデータ容量の大きなコンテンツでも問題ないが、海外ではダウンロードできない場合もある。さらにアンドロイド端末が中心だから、ハイエンド、ミドル、ローエンドそれぞれの端末で快適にダウンロードでき、かつ、サクサク遊べることが前提となる。

海外はハッカーも多いから、セキュリティ対策も必要だ。ハッキングが原因で海外展開に苦戦しているスマホゲームの会社を、結構知っている。マーケティングも重要で、国ごとに広告の費用対効果を見ながら調整しなければ利益が出ない。結局、世界中で売れる体制を整えることは、地道なオペレーションの積み上げなんです。今はフィリピンにセンターを作り、各国語での問い合わせに対応するカスタマーサポートを行っている。

打席と打率を最大化するのが経営

――ゲームの開発体制は。

エンタメ産業で継続的にヒットを出す仕組みはシンプル。もともと僕はドラマや映画を作っていたが、そこでも、同じチームが全力でコンテンツを作っていても、時の運を含めて必ずボラティリティがある。

野球と同じで、経営がコントロールできるのは打席数と打率です。打席数はエンジニアやデザイナーを含めた開発体制で、何本作れるか。打率は優秀でとがった人材がいるかどうか。やっぱり宮崎駿やスピルバーグが作るとヒット確率は飛躍的に上がるわけです。この2つを最大化させるのがマネジメントの仕事だと思う。

よく国内のエンジニアが足りないと言われるが、言い訳せずにとにかく引っ張ってくるんですよ。当社の社員は840人いるが、国内外で競合他社と比べても圧倒的に多い。打率の点でも、驚くくらい優秀な人材を採用できている。彼らは一人でも多くの人に遊んでほめてもらうことを求めている。

当社は世界中のユーザーにゲームを届けることができる体制が強みで、そこに魅力を感じる人は多い。報酬体系もしっかりしていて、日本で作ったゲームが海外で売れるとボーナスが増えるし、それは海外拠点にいる社員も同じだ。やるべきことはやっているから、いずれヒット作がたくさん出るはずだ。

――自社ゲームだけでなく、他社のゲーム配信事業も手掛けていますね。

ポートフォリオを意識している。自社開発のゲームはハイリスクハイリターンだが、それに挑まないとゲーム会社は終わりだ。一方で他社のゲームを海外で配信するパブリッシングはローリスクローリターン。当社で構築したネットワークを他社に活用してもらい、手数料をいただく。すでにセガネットワークの「チェインクロニクル」やアカツキの「サウザントメモリーズ」などを海外で配信しているが、日本で人気のあるゲームだから世界でヒットする確率も最初から高い。

その中間となる事業が、他社IPを活用したゲームになる。バンダイナムコゲームスの「ソードアートオンライン」やディズニーの「ベイマックス」など。僕らはブラウザゲーム時代もカプコンの「モンスターハンター」などのゲームを作ってきた実績がある。大企業が重要なコンテンツを任せてくれるだけの信頼性も当社の強みなのかなと思う。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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