
窮地を脱して再成長軌道に乗ったグリー。本「プレミアム集中連載」では、この変革を主導した水野省三・経営管理本部長が「実践的なノウハウ」を伝授します。本連載は、以下のスケジュールで連載を進めていきます。
〜連載INDEX〜
第1回 グリーは、どうやって窮地を抜け出したのか
第2回 「見える化」の徹底が正しい行動に繋がる必然
第3回 PDCAサイクルのポイントは「精度」と「速さ」
第4回 経理財務部門の武器は「管理会計システム」だ
第5回 事業部門の管理レベルが会社の強さを決める
第6回 グリーは資金重視の経営で財務を改善させた
第7回 経営に「緊張感」をもたらす資本市場との対話
筆者は、パナソニックで35年間勤め、最後の2年は現社長の津賀体制の下で財務・IR部長として経営改革を支えてきました。
退職後、急成長後の踊り場を迎えていたグリーから「管理レベル改善のためにぜひ来てほしい」と要請を受け、必要とされるならと軽い気持ちで引き受け、2013年10月に入社しました。当時は会社設立後10年足らず、従業員平均年齢は31歳、急成長のため平均勤続年数1.4年。私のために新設された経営管理本部の約30名のメンバーも全員が入社2年以内かつ転職経験者たちでした。
それまで1つの会社で10~20年間勤続のベテランの部下達とあうんの呼吸で仕事をするのが当たり前だった筆者にとって「バックグラウンドがばらばらの若手集団」をマネジメントし、経営管理レベルを上げる挑戦がこのとき始まったのです。
管理無き急激な成長は必ず破綻する
管理部門の役割は「事業の健全な成長をサポート」することです。事業の成長するスピードに管理が追いつかなくなると、経営的に破綻しますが、その事業の管理レベルを向上させることができれば、更なる飛躍を遂げることができます。

筆者が入社した直後のグリーは、「管理無き急激な成長で破綻に向かっている」状態。ソーシャルゲームの大ヒットで直近3年間で売り上げは4倍強、営業利益も800億円を超えるまでに急成長していましたが、急速なグローバル展開などにより従業員数は2010年の約200名から、2013年には約2,400名に急増して管理面で体制構築が追いつかず混乱していました。
そうした中、ガラケーからスマートフォンに市場がシフトし、自身の強みとしていたプラットフォーム事業が縮小を始めます。グローバル展開した海外拠点も順次撤退し、国内もグローバル人材を中心に希望退職者を募集するなど、会社として苦渋の決断を迫られるような状況でした。
ただ、当時からグリーには明確なミッション・ビジョン・バリューが定義されており、「つねに前向きに挑戦する。成功するまでやり続ける」など行動規範が徹底していました。パナソニックの海外部門の経理責任者時代に新興国における急激な成長と混乱を経験していた私は、「管理レベルが向上すれば、更なる飛躍へ」向かうと確信し、経営管理の改善がスタートしたのです。
この記事をお読みの皆さんは「経営の見える化」とはどういうことかわかりますか。その目的は、何でしょうか。
今回の連載では、上場を目指している企業や上場後に期待された成長が困難になっている企業、また経営改革を実行しようとしている方たちを対象に、わかっているようで実際には実践できていないようなことを、できるだけわかりやすく、実例を紹介しながら経営改善につながる「アクション」が取れるように書き進めていきたいと思います。
本連載の第1回は、今後の連載でお伝えすることを紹介します。
グリーは「真っ暗で何も見えない」会社だった
まず次回(第2回=6月21日配信)の「見える化」の徹底が正しい行動に繋がる必然では、「経営の見える化」の重要性をお伝えします。

パナソニックでは「経理は経営の羅針盤」で、経営の進むべき方向を示す役割を担え、と叩き込まれます。組織にとって大切なことは「信賞必罰」で、それを支える仕組みが「適正な経営目標の設定」とそれに対する「成果の見える化」です。
2013年に入社した直後のグリーの印象は「まるで映画館入場直後の、真っ暗で何も見えない」状態でした。
全社の貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)はありましたが、年率2.5倍という急成長のスピードに管理が追いついておらず、丼(どんぶり)勘定で実態がまったくわかりませんでした。そうした状況の中、入社半年で管理会計の仕組みを導入して一目で経営実態がわかる形で決算報告ができるようにし、「是々非々の明確化」を行っています。そんな「経営を鳥のように上空から俯瞰」できるようになるためのノウハウをご説明します。
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