ソフトバンク藤原氏「スプリントは辛抱の時」 藤原和彦取締役に聞く

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──契約数の純増は見えてきているのか。

「いまの解約率だと辛抱強く取り組まなければいけないと思う。数だけ増やすやり方はないわけではないが、それよりはマルセロCEOが話しているように、プライム顧客がどうなっているのかというのをしっかりと見ていく、本質的なところから目を背けないということはいいことだ」

──10─12月にはポストペイドの純増に転換できるか。

「クリスマスの盛り上がり方によっては追い風が吹く可能性はあるが、季節要因もあり、四半期ひとつで一喜一憂はしない」

マーケットに深さがある

──米国は料金競争が激しくなり、当初描いていた成長路線は描けないのではないか。

「日本市場と比べると人口の伸びもあり、マーケットの深さをすごく感じる。よって決して悲観論ばかりではないが、いまはネットロスの状態なので、楽観できる状態でもなく、少しずつ積み上げていくしかない。通信事業は蓄積の事業なので、ひとたび儲かりだすと過去に頑張ったものが蓄積のように効いてくる」

「米国は全体でみればARPU(加入者1人当たりの月間平均収入)が高い国だ。競争が激しくなったと言っても世界で見れば高い。LTE(高速通信)、スマートフォン(スマホ)、データ中心の料金プランなど、基本的には日本でやってきたことと非常に親和性が高い。したがって、米国(進出)については決して間違っていたとは捉えていないが、辛抱のいるときだ」

──シリコンバレー拠点を縮小するようだが。

「やっていることは変わらないし、シナジーも変わらない。もともとシリコンバレーに行ったときは(スプリントと)お互いに手探りの状態だった。加えて、そこのリーダーは(当時はブライトスターCEOだった)マルセロ氏と考えていたが、マルセロ氏にはスプリントを託した。マルセロ氏が(スプリント本社のある)カンザスに行って、(シリコンバレーの)位置づけはやはり変わってくる」

「残すものは残しているし、日本に戻すものは戻しているし、カンザスに行った方がいいものはカンザスでするし、そういう判断をしている。(フロアーが埋まらない状況が)長期化するようだったら転貸もできる契約にはなっているので、そういうこともあるかもしれないが、短期的なところであまり一喜一憂しなくていいのではないか」

──国内ではソフトバンクは価格競争を放棄したのか。

「いまは差別化が非常にやりにくい局面だが、このままでいいと思っているわけではない。いまのようにすぐにコピーしあう感じのときは、自分たちもそういう競争に打ち勝っていける体力をつけていかないといけない。ただ、次の一手についてはやはり貪欲でなければいけないと思っており、その面では日本も米国も辛抱の局面かもしれない。短距離のレースをやっているわけではなく、マラソンをしているので、いろいろな局面がある」

(志田義寧 笠井哲平)

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