本業消失の危機を乗り越えた富士フイルム。勝ち残りのための経営戦略を5つに分解する。
法則1 「悪い数字」から逃げない
長年の事業が変調を来した場合、「まだ何とかなる」という希望的観測を抱き、対応が後手に回る企業が少なくない。屋台骨を支えてきた主力事業なら、なおさら悲観的な見通しからは目を背けたいところだろう。だが、初動の遅れが致命的な事態を招いた例は、枚挙にいとまがない。
富士フイルムは利益の3分の2を稼ぎ出していた写真フィルム事業を失ったが、大きなダメージを受ける前に事業構造転換に成功した。それは、写真フィルム需要の先行きを正確に予測できたからだ。カメラの販売台数の伸びに応じてフィルムの販売本数も伸びる。婚姻数が増えたり、出生率が上がれば現像枚数も増える。国内シェア約7割というほぼ寡占状態だったため、こうしたマクロデータを用いた需要予測が自社製品の販売動向にぴたりと符合した。観測データがマイナスに転じれば、フィルム需要が減るのも自明の理だ。
写真フィルムを脅かす存在になるデジタルカメラも自社で開発していた。デジカメの画質はいつ頃フィルムに追いつきそうか、「ライバル」の動向も把握していた。デジタル化は、先行して進んでいた印刷事業などでも経験済みだった。
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