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山内昌之 東大名誉教授 誌上講義 世界を揺るがす中東複合危機

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やまうち・まさゆき●1947年生まれ。カイロ大客員助教授、東大教授などを歴任。『中東国際関係史研究』『鬼平とキケロと司馬遷と』など著書多数。(撮影:田所千代美)

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後世の歴史家は第3次大戦と呼ぶはず

──大量の死者や難民を生んでいるシリア内戦は21世紀最大の人道危機と呼ばれ、国際社会も対応に苦しんでいます。中東における紛争の起源をたどると、どんなことがいえますか? 

中東は、地政学的に緊張や紛争が収束しない構造を持っており、政治と地理の絡んだ典型的な地政学紛争の舞台となっている。後世の歴史家は現在を「第3次世界大戦の前夜」か、気がつけばまとまりがなく始まっていた「第3次世界大戦」だったと記述するだろう。今後の戦争は過去の二つの世界大戦のような国家間の戦争が中心ではなくなる。むしろイスラム過激派に象徴される非政府組織と、国家間の衝突が複合化する戦争が中心になると予測する。

パリ同時多発テロ、シナイ半島でのロシア旅客機爆破事件、アフリカやインドネシアのテロ、米国でも小規模だがイスラム過激派によるテロが頻発している。これらの複合危機の潮流は国家間の戦争より厄介だ。

なぜなら国家間の戦争は政治外交で制御可能だが、国家の論理を持たないテロ組織の遠隔戦争・遠隔テロのほうは国際的に統制できないからだ。特に「イスラム国」(IS)はシリア戦争の遠隔地戦線として欧州のテロを続け、難民を利用して中東と欧州の危機を結合することで「中東欧州複合危機」をもたらす。シリア戦争を舞台にロシアの「新冷戦」とISのテロ戦争が交差するところで、第3次大戦の性格が明らかになる。このあたりを分析したのが、最新著の『中東複合危機から第三次世界大戦へ』(PHP新書)である。

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