チュニジアの1人の青年の自殺に端を発した中東諸国での民主化運動、「アラブの春」から5年が経った。チュニジア以外ではほとんどの国が挫折、政権交代したリビアもシリアと同じく「イスラム国」(IS)が跋扈(ばっこ)する内戦の混沌の中にある。中東のイスラム教国(人口の過半数をイスラム教徒が占める国家)の民主化は不可能なのだろうか。
民主化を経験した中東諸国を眺めると、いずれの国も独裁体制が残した「負の遺産」に直面している。
2010年末までの同地における権力掌握は、ほとんどがクーデターか、前任者の死去による昇格か、父から子への権力移譲かであった。権力掌握が「力」と「運」によるものであったため、権力を握った新たな為政者は地位保全の欲望から強権体制を敷くことになった。
野党勢力が認められてきた場合でも、政権与党による認可と政党助成金によって存続が許されていたため表立った対立行動を取ることができず、チュニジアなどでは党組織の実体すらなかった。運よく活動が許され野党の実力者になっても、与党に閣僚ポストをちらつかされると信条を変え、政権にすり寄っていった。
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