「2年で2%」の物価目標を高らかに掲げた黒田日銀が窮地に立っている。ベースマネーを大胆に増やす異次元緩和をブチ上げて2年が経過したら、消費者物価上昇率(消費増税要因を除くコア、以下同じ)はゼロ%に落ち込んだのだ(図表1)。もくろみの狂った日本銀行は秋以降の物価上昇に望みを託すが、勝算は薄い。金融市場では「異次元緩和の撤退は不可避だろう」(大手邦銀)との見方が支配的になっている。
異次元緩和の軌跡を簡単に振り返ってみよう。リフレを信奉する安倍晋三首相に任命された黒田東彦総裁は2013年4月4日、ベースマネーを年間60兆~70兆円増やすことを柱とする量的・質的緩和を導入した。従来の日銀の発想を超えたまさに「異次元」の緩和は、円安・株高の流れを加速させた。
緩和効果を見誤り窮状深まる日銀
が、順調だったのは当初の1年間だけで、昨年春の消費増税でつまずきが始まった。駆け込み需要の反動で景気は失速。原油安の進行で、1%以上に上がっていた物価上昇率も急速に鈍化した。昨年10月にはベースマネーを10兆円増額する追加緩和に追い込まれた。その後も物価は低迷し、今年2月にはついにゼロ%になった。日銀が胸を張った「2年で2%」は、「2年でゼロ%」という、冗談のような無残な結末を迎えた。
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