差別化できない金融サービスで東京市場に乗り込んでも、過当競争を生むだけだ。
3月のある日、東京北東部に拠点を置く信用金庫の幹部があきれ顔でつぶやいた。「ここはもともと信金が強かった地域。そこに最近、いくつもの地方銀行が攻め込んできている。営業現場から、ふざけるなという声が上がっている」。
地銀はこれまで、地元密着金融を規制当局から強く求められていたこともあり、本店のある道府県を離れ東京での展開を強化する動きを表立ってはしてこなかった。しかしここに来て、東京での展開強化を経営戦略の柱に掲げ、実行に移す地銀が相次いでいる。
「あれは群馬の地銀だ」。先の信金幹部が怒りをあらわにする。「ある日突然、うちの親密取引先の口座に2億円振り込んできた。取引先に確認したところ、うちより低い金利で貸してくれるというから借りたという。長い付き合いなのにどうしてと話し、取引先の了解を得て、その地銀に2億円を送り返してやった。でもその取引先への貸し出しは地銀と同じ金利に下げることになった」。
群馬県に本店を構える地銀でさえ、埼玉県を越えて、東京で猛烈な融資攻勢をかける時代なのだ。
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