下落傾向の金価格、2016年になれば反騰か ユーロ不安再燃が価格上昇の号砲に
右を見ても左を見ても、下げ材料だらけ。が、専門家たちからは、不思議なほど悲観論が聞こえてこない。住友金属鉱山の武本拓也・銅貴金属営業部長は「(悪)材料への耐性ができている」と見る。
金は21世紀初頭の300ドルから1923ドルまで棒上げに上げた。相場格言の「半値八掛け二割引き」に従えば、600ドル台があっておかしくなくない。「そうはなっていない。相場はいつまでも同じ材料では下げ続けない」。
金=「第一等の通貨」?
歯止めになるのは、まず金の生産コスト。環境問題や労働争議の頻発から、金の生産コストは1100~1200ドルに上昇し、世界の鉱山の8割が赤字操業になっている。
さらに世界の金融危機は本当に収束したのか、という大問題がある。EUはこれからQEに取り掛かる段階。資産購入を停止したFRBも4.5兆ドルに膨らんだバランスシートには手をつけていない。ワールド・ゴールド・カウンシルの元日本代表、豊島逸夫氏が言う。「米国も出口戦略を策定できていない。ジャブジャブの過剰流動性が暴れ出したら、そしてユーロ不安が再燃したら、どうなるか。16年にはほころびが出てくる」。
そうなれば、金=「第一等の通貨」(グリーンスパン元議長)の出番が来る。元議長の金への“愛”は、自ら主導した金融政策に対する根源的な不信表明なのだ。
(「週刊東洋経済2014年12月20日号」<15日発売>掲載の「価格を読む」を転載)
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