タカタがエアバッグに使う火薬は安全なのか

拡散するリコール問題、火薬の専門家に聞く

――タカタ製エアバッグの不具合が相次いでいます。製造工程に問題があった可能性が高いのですが、そもそもガス発生剤に使われている火薬、硝酸アンモニウムについて安全性を疑問視する声があります。硝酸アンモニウムはとりわけ危険な火薬なのでしょうか?

 硝酸アンモニウム自体が危ないということはない。産業用爆薬や肥料などに一般的に使用されている化学物質だ。火薬の材料としては燃えにくい。エアバッグのガス発生剤として考えた場合、ガスの発生量が多く、非常に性能がよい。だから、ガス発生剤メーカーはどこもこれを使おうと努力した。

――硝酸アンモニウムに欠点はないのでしょうか。

欠点もある。「転移」というのだが、温度の変化によって結晶の形、密度が変わっていく。密度が変わる温度が複数ある(-17度、32度、50度、84度、125度)。その温度を超えると膨らんで戻ってというのを繰り返す。

――転移があるとどういう弊害があるのですか。

 通常、インフレータに充填するのにペレット状に固めて使うのだが、温度変化で密度が変わるとペレットにひび割れなどの形状変化が起こる。
 ガス発生の速度は火薬の表面積で変わる。ペレットにひび割れなどがあれば、急速に圧力が高まる事象が発生する。

 なぜ多湿地域で不具合が起きたか

――インフレータとして使用するのは元々無理があるのでしょうか。

 転移を解決する方策が昔からある。相安定化という技術だ。硝酸アンモニウムにほかの化学物質を添加し、「相安定化硝酸アンモニウム」とすることで安定させられる。この技術を使いこなせた会社だけが、エアバッグのガス発生剤に硝酸アンモニウムを使うことができた。

――ただ、吸湿性が高いと聞きます。

確かに吸湿性は高い。ただし、吸湿するだけなら基本性能が落ちるだけだ。

――しかし、現実に多湿地域でインフレータの暴発が起こっています。なぜでしょうか。

 データがないので正確なことは言えないが、吸湿によって相安定化に悪影響を与えた可能性がある。そのため転移が防げず、ペレットが割れたりした可能性がある。

――硝酸アンモニウムはコストが安いとも聞きます。

 硝酸アンモニウムは確かに安価な物質だが、相安定化硝酸アンモニウムはそれほど安価でもない。メーカーが使いたいと考えたのは、ガス発生の性能が高いからだ。

次ページこの問題にどう対処すべきか
自動車最前線の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • グローバルアイ
  • 賃金・生涯給料ランキング
  • ボクらは「貧困強制社会」を生きている
  • 就職四季報プラスワン
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT