大久保:いや、ほんと余計なお世話ですよ。でも、僕はやっぱり現場が見てみたかった。このまま民間企業へ入ったり、アカデミックの方面へ行っても、現場で生活をする彼らのことを知らない、そういった思いは一生消えないと思ったのです。そして、やはり子供の教育関係の仕事がしてみたかった。そこで、虐待を受けた児童や、社会から捨てられた子供たちを抱える学校の運営を行う、モザンビークのポストに応募することにしました。
石崎:モザンビークという国自体に関心があったというより、業務内容、恵まれない子供たちの教育という業務内容から選択したのですね。まさに、大久保さんの原点ですね。
未来のために、子供たちにはあえて厳しく
大久保:そうなんです。今回はバングラデシュと同じように教育現場にも立ちましたが、モザンビークではより厳しく指導しました。甘やかして、子供の人気を取ることは簡単です。でも、それだけでは彼らの未来のためにならないのです。だから、あえて厳しく接しました。この業界、「人のため」とは言いますが、嫌な体験もたくさんします。お金を盗まれることもしばしばですし、学校でカメラを取られたこともあります。100個あれば99個は嫌なことかもしれません。
石崎:壮絶な現場ですね。きれいごとがまかり通らないと言いますか。でも、やっぱり大久保さんはこの業界を選ばれました。
大久保:はい。モザンビークでも最後の日のことが忘れられません。厳しく接してきて嫌われたかなとも思っていましたが、子供たちが手作りのネックレスをくれました。
僕も子供たちも、大泣きして別れました。そんな瞬間のために、自分の人生はあるんだなって思うんです。
石崎:すばらしい体験があるから頑張れるのですね。その後、今度は専門的な訓練を得ようと、大久保さんはハーバードへと進学されました。
ハーバード入学の要件とは
大久保:ハーバードのケネディスクールという公共政策大学院へは、協力隊にいるときから進学を希望していました。そこへの入学要件として、途上国の現場経験が2年必要ということで、ちょうど協力隊の経験を生かすこともできました。
石崎:ハーバードで学び、すばらしかったことは何でしょうか?
大久保:何よりも教授陣がすばらしかったです。僕がこれまで出会った人の多くは、現場一筋で難しいことはよくわからないという人か、理論ばかりで現地を知らない人など、偏った人が多かったのです。しかし、ケネディスクールの教授は、実務経験も豊富で、さらに理論をきちんと理解し、本気で事態を変えていこうという人たちばかりでした。大きな刺激を受けました。
石崎:現場経験、そして学際的な知見、この2つをもって卒業後はどういった選択をしようと考えていたのでしょうか?
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