「悩みをすぐに解決したい人」に欠けている視点 悩みを「ネガティブ」に捉えると本質を見失う

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悩んだ時は「等身大の自分と正直に向き合う機会が訪れた」と考えましょう。普段向き合えていない、一番近くて一番遠い存在である自分。そんな自分を理解するきっかけを悩みは与えてくれます。悩みに向き合っていくことで、ようやく「自分はどういう人間で、何に喜怒哀楽を感じ、どんな強みと弱みを持ち、何を大切にして生きていきたいと思っているのか」が少しずつわかってくるものだと思います。

しかしながら、悩みの中に詰まっている、自分を深く理解するためのヒントには見向きもせず、手っ取り早く悩みを消し去るための解決策を自分の外側へ求めてしまう人が多いのが現状です。

悩みをすぐに解決しようとする行為は、「自分はどんな人間なのか?」「なぜこんなにも自分はこの問題について悩むのか?」といった、本質的な問いについて考えるチャンスを放棄することに他なりません。

悩みをじっくり掘り下げていくと、不安や不満の出どころや、なんとなく感じている居心地の悪さや違和感の原因が、少しずつわかってきます。自身の性格はもちろん、仕事、人間関係、家庭環境、失敗や成功の体験のほかに、これまでに読んだ本や著名人の影響など、すべての物事が絡み合って悩みが生まれていることが明らかになってくるのです。

それらを1つひとつ解きほぐし、悩みの正体を明らかにして、悩みの原因となっている芯にたどり着くまで、根気強く深掘りしていかなければいけません。「答えは悩みの中にこそある」のです。

悩みは「遠ざける」のではなく「欲しがる」もの

私の半生は、ずっと悩みとともにありました。それ自体は決して特別なことではありません。なぜなら、人は生きている限り、かならず悩む生き物だからです。

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たとえば、キャリアに関する悩み。人間関係に関する悩み。仕事に関する悩み。お金に関する悩み。恋愛に関する悩み。結婚に関する悩み。育児に関する悩み。健康に関する悩み。介護に関する悩み……。人生には、必ず、こうした悩みがつきものです。

だからといって、私は「悩みとともに生きましょう」なんてありきたりのことを言うつもりはありません。私がお伝えしたいことは、「悩みは欲しがれ」です。

悩みは、私たちを「苦しめるもの」であることは間違いありません。だから、多くの人は悩みのない人生、悩みの少ない人生を歩みたがります。

ですが、悩みは私たちの人生にとって「不要なものか」と問われれば、私は「必要なものだ」とはっきりとお答えできます。そして、悩みは「必要なもの」どころか、自分やチームの可能性を引き出してくれる「情報の宝庫」なのです。

悩みはすぐに解決したり、消し去ろうとしたりするのものではなく、「向き合うもの」という理解が広まり、一見ネガティブで遠ざけていた悩みを、むしろ「欲しがる」方が増えることを願っています。

神保 拓也 トーチリレー代表

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じんぼたくや / Takuya Jinbo

1981年生まれ。大学卒業後、三菱UFJ銀行、外資系コンサルティング会社を経て、ファーストリテイリングに入社。グローバル人材の採用や、社内経営者育成機関の立ち上げの実績を評価され、35歳で史上最年少の執行役員に抜擢される。課題山積みだった物流の構造改革を、業務未経験ながら、わずか2年で実現。その後、2020年に「人に寄り添い、悩みに向き合う」をコンセプトとした株式会社トーチリレーを設立。悩める個人や企業に対し、講演会や、心に火を灯す「トーチング」という面談サービスを展開している。

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