「人気キャラクター名に改名した男」の自由な人生 彼と婚活で出会い結婚を決断した妻の「視点」

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美香さんは親譲りの敬虔なキリスト教徒なのだ。留学先も聖地のあるイスラエルであり、歴史と地理とともに聖書を深く学ぶ「バイブルスタディ」を経験。帰国後も日曜日には欠かさず教会に行っている。聖書の教えを一緒に実践できる相手を求めていた。

「結婚相談所もクリスチャン専用のところでした。でも、同じ信仰があるからと言って気が合うとは限りません」

お相手はキャラクター名に実名を改名

美香さんは婚活方法を変えた。玉石混淆だけど膨大な数の人が登録している大手のマッチングアプリに参加し、「クリスチャン」と「海外生活経験者」というコミュニティに入って相手を探すことだ。キリスト教徒でない人からのアプローチは一切お断りにした。

登録してから1カ月後、俊明さんからの「いいね」がついた。正直言って好みの顔ではなかったが、AI判定による相性度は97%。そして、メッセージ交換で旧約聖書に関するディープなやり取りができたのが何よりの好印象だった。

「趣味の話などは一切なくて、ほとんどすべて聖書の話でした。毎日やりとりをして、10日後に会いました」

実際に俊明さんに会った美香さんはのけぞるような驚愕体験をする。当時、俊明さんはある有名キャラクターに心酔しており、好きすぎるあまりそのキャラクター名に実名を改名していたのだ。仮に「ピーター・ラビット」としておこう。

マッチングアプリは実名ではなくニックネームでやり取りをするのが一般的だ。俊明さんが「ピーター」で、それが実名だったとしても高校時代はアメリカで過ごした美香さんは驚かない。しかし、名字はどう考えてもおかしい。

「でも、彼は本気でした。免許証もクレジットカードも『ピーター・ラビット』。度肝を抜かれました」

俊明さんはその「実名」のせいで結婚相談所への登録を断わられた過去がある。はたからはふざけているようにしか見えないから当然だ。しかし、本人はいたって真剣なのが変わり者のゆえんである。

美香さんは混乱しながらも踏みとどまった。10日間のメッセージ交換で彼の真面目さと信仰心はわかっている。名前でお付き合いするわけではないのだから、どういう人なのかを実際に見てから判断しよう、と。

交際をするにあたって美香さんも「負の事情」を明かした。両親の介護が必要な身であること、すでに40代後半なので俊明さんが希望する子作りは難しいことだ。

「言わなきゃいけないことがある、と美香が言うので何だろうとずっと考えていました。でも、たったそれだけのこと?と思ってしまいましたね」

嬉しくて仕方ない様子で口を開く俊明さん。雑貨卸の仕事を一人で営んでいた彼は、以前は介護福祉関連の職にも就いていたのだ。

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